インフルエンザの予防接種で発症は減る?

インフルエンザの予防接種で発症は減る?
読了目安 5〜7分最終更新日 2026.11.06
答え効く

減ります。かかる人は減りますが、ゼロにはなりません。

根拠

健康な大人71,221人の試験をまとめた分析で、検査で確かめたインフルエンザにかかる人は、接種なしの2.3%から0.9%に減りました [1]。65歳以上でも6%から2.4%に減っています [2]。根拠の確かさは低めです。高齢者の試験は診断方法がはっきりせず、流行株とワクチンがずれた年には差が出なかった試験もあるためです [3]。

この答えの範囲

検査で確かめたインフルエンザにかかる人の話です。重症化 (入院など) は、観察研究で少ないという関連が見られる段階で、比較試験での確認はまだ十分ではありません。

じゃあ、どうする?

受けておくと、かかる人の割合は下がります。打ったあとも、かかる人はいます。体調が悪いときは早めに受診を。高齢の方や持病のある方は、かかりつけ医に相談してから決めましょう。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。低い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。9 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。おおむね一致
判定の内訳を見る(スコア 64 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量19.520研究件数と参加人数
一致度21.325結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 95.8 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 1 本・RCT のメタ解析 2 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「低い」で、これを強度の上限にしています。 この上限により、強度を A から C に下げました。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

インフルエンザの予防接種とは

インフルエンザの予防接種は、ウイルスの成分を体に入れて、かかりにくくするための注射です。鼻に噴霧するタイプもあります。かかる人を減らし、かかったときの症状を軽くするとされています。毎年、流行しそうな型に合わせて中身が変わるのが特徴です。注意点は、打っても絶対にかからないわけではないことです。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、イタリアのアレッサンドリア地域保健局などの研究チームが2018年に発表したメタ解析です [1]。メタ解析とは、似た条件の試験の結果を集めて、まとめて計算する方法です。

研究の種類健康な大人を対象にした比較試験のメタ解析
対象16〜65歳の健康な大人 (25件・71,221人)
比べたもの不活化ワクチン (注射) と、プラセボまたは接種なし
結果検査で確かめたインフルエンザにかかる人が2.3%から0.9%に減少
試験の結果接種すると、1シーズンの間にインフルエンザにかかる人が2.3%から0.9%に減りました (リスク比0.41)。

71人に接種して1人を防げる計算です [1]。

試験は1969〜2009年のものです。かかる人は半分より少なくなりましたが、ゼロにはなっていません。

65歳以上では

65歳以上の人を対象に、ワクチンとプラセボを比べた8件の試験では、かかる人が6%から2.4%に減りました (リスク比0.42) [2]。30人に接種して1人を防げる計算です。インフルエンザの診断方法がはっきりしない試験があり、根拠の確かさは低めです。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

流行しているウイルスとワクチンの型がずれた年は、効き方が小さくなります。2016〜2017年に12か国で行われた65歳以上の試験では、アジュバント (効きを高める成分) 入りのワクチンの有効率は19.8%で、はっきりした差は出ませんでした。調べたウイルスの85%がワクチンの型と合っていなかった年です [3]。

差がはっきりしなかった試験65歳以上 (ワクチン群3381人・比較群3380人)

流行株とワクチン株が大きくずれたシーズンで、有効率は19.8%でした。

アメリカのミネソタ大学などによるまとめでは、18〜65歳の大人で有効率は59%でしたが、有効だったのは12シーズン中8シーズンでした [4]。毎年、同じ効き方をするわけではありません。

実際に接種した人を調べた研究では

比較試験ではなく、実際に接種した人を調べた観察研究191件のまとめ (2017〜2022年に発表) でも、接種はインフルエンザにかかる人が少ないことと関連していました。有効率は18歳未満で48.6%、18〜64歳で36.7%、65歳以上で30.6%でした [5]。

重症化は防げる?

入院や肺炎などの重い状態については、今ある研究は観察研究が中心です。

  • 観察研究: 入院した人を調べた165件のまとめで、接種はインフルエンザによる入院が42%、肺炎が51%、集中治療室への入室が52%、人工呼吸などが55%少ないことと関連していました。根拠の確かさは非常に低いとされています [6]

観察研究は、接種した人としない人の元々の違いが結果に影響します。重症化を防ぐと言い切るには、比較試験での確認が必要です。今回集めた研究では、その確認はまだ十分ではありません。

子どもでは

コクランレビュー (イギリスのオックスフォード大学などの研究チーム、2018年) では、2〜16歳の子どもで注射のワクチンを打つと、インフルエンザにかかる子が30%から11%に減りました (リスク比0.36)。根拠の確かさは高いとされています [7]。

新しい試験でも同じ向きです。2017〜2019年の試験では、2歳から18歳未満の4514人で、細胞培養でつくった不活化ワクチンを打った子のうちインフルエンザにかかったのは7.8%で、比較のワクチンの16.2%より少なくなりました [8]。2023〜2024年のシーズンに中国の3〜17歳6000人で行われた、鼻に噴霧するワクチンの試験でも、プラセボよりかかる子が少なくなりました (ハザード比0.53) [9]。

よく言われていることは本当?

  • 接種すると発症を防げる本当です。 大人でも高齢者でも、かかる人の割合は下がります [1] [2]
  • 打っても、かかる人がいる本当です。 接種した大人の0.9%はかかっています。型がずれた年は差が小さくなります [1] [3]
  • 重症化 (入院・肺炎) を防ぐ研究が足りず、まだ分かりません。 観察研究では入院が少ないという関連が見られますが、比較試験での確認はまだ十分ではありません [6]
  • 高齢者は死亡が大きく減る今回集めた研究では確かめられていません。 発症は6%から2.4%に減っています [2]
  • 子どもにも効果がある本当です。 注射でも鼻に噴霧するタイプでも、かかる子は少なくなっています [7] [9]

02注意点

数値は、研究が行われた年の流行株とワクチンの組み合わせでの結果です。大人の試験は1969〜2009年に行われたもので、いまの流行とぴったり同じではありません。高齢者の試験も、診断方法がはっきりしないものを含みます [2]。持病がある人、服薬中の人、過去の接種で体調を崩したことがある人は、医師に確認してください。

数値は「その年の平均」として読む

流行株とワクチンがずれた年は、差が小さくなります。

03まとめ

インフルエンザの予防接種で、かかる人は減ります。ただしゼロにはなりません。
重症化については、接種した人で入院が少ないという関連は見られますが、比較試験での確認はまだ十分ではありません。
高齢の方や持病のある方は、かかりつけ医に相談して決めましょう。

04よくある質問

Q打ってもかかったら、意味はない?

意味はあります。接種した大人でも0.9%はかかりましたが、接種なしの2.3%より少なくなっています [[29388196]]。入院などの重症化は、比較試験での確認がまだ十分ではありません。

Q効果はどのくらい続く?いつ打つのがよい?

研究では確かめられていません。今回の研究が調べたのは、1シーズンの間にかかる人の割合です [[29388196]]。

Q風邪にも効く?

インフルエンザ以外の風邪は、今回の研究では確かめられていません。風邪については [ビタミンCで風邪は防げるって本当?](/evidence/vitamin-c-common-cold) で研究を紹介しています。

QビタミンDでインフルエンザは防げる?

接種とは別の疑問です。[ビタミンDで免疫力は上がる?](/evidence/vitamin-d-immunity) で、インフルエンザへの研究をまとめています。

05参照した論文

判定に使った主な論文(9本)

[1]健康な大人のインフルエンザワクチンの効果をまとめた分析

発表年
2018年
研究機関
イタリア・アレッサンドリア地域保健局
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
71,221人
結果の向き
良い方向

16〜65歳の健康な大人71,221人で、接種するとインフルエンザにかかる人が2.3%から0.9%に減った。

[2]高齢者のインフルエンザワクチンの効果をまとめた分析

発表年
2018年
研究機関
イタリア・アレッサンドリア地域保健局
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
5,000人
結果の向き
良い方向

65歳以上でワクチンを打つと、かかる人が6%から2.4%に減った。RCT8件。

[3]流行株がずれた年の高齢者への効果を調べた試験

発表年
2021年
研究機関
チェコ・フラデツ・クラーロヴェーのワクチン・渡航医学センター
掲載誌
The Lancet. Infectious diseases
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
差なし

流行株がずれた年の65歳以上で、有効率は19.8%。はっきりした差は出なかった。

[4]インフルエンザワクチンの効果と実際の有効性のまとめ

発表年
2012年
研究機関
アメリカ・ミネソタ大学
掲載誌
The Lancet. Infectious diseases
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究10件を統合
結果の向き
良い方向

18〜65歳の大人で有効率は59%。有効だったのは12シーズン中8シーズン。

[5]実際の接種での有効性を年齢別に調べたまとめ

発表年
2024年
研究機関
中国・北京大学
掲載誌
Vaccine
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究191件を統合
結果の向き
良い方向

観察研究191件で、有効率は18歳未満48.6%、18〜64歳36.7%、65歳以上30.6%。

[6]重症化への効果を調べた観察研究のまとめ

発表年
2026年
研究機関
カナダ・マクマスター大学
掲載誌
Clinical microbiology and infection : the official publication of the European Society of Clinical Microbiology and Infectious Diseases
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究165件を統合
結果の向き
良い方向

入院した人の観察研究165件で、接種は入院が42%少ないことと関連していた。

[7]健康な子どものインフルエンザワクチンの効果をまとめた分析

発表年
2018年
研究機関
イギリス・オックスフォード大学
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
1,628人
結果の向き
良い方向

2〜16歳で注射のワクチンを打つと、かかる子が30%から11%に減った。

[8]子どもへの細胞培養ワクチンの効果を調べた試験

発表年
2021年
研究機関
オーストラリア・マードック小児研究所
掲載誌
The New England journal of medicine
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
4,514人
結果の向き
良い方向

2歳から18歳未満の4514人で、かかった割合は7.8%と16.2%。有効率54.6%。

[9]中国の子どもへの鼻噴霧ワクチンの試験

発表年
2025年
研究機関
中国・内モンゴル自治区疾病予防管理センター
掲載誌
Vaccine
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
6,000人
結果の向き
良い方向

3〜17歳の6000人で、検査で確かめたインフルエンザがプラセボより少なかった。

ほかに参考にした論文(3本)

判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。