[1]職場や学校の加湿が目・肌・喉や鼻の乾燥の症状に効くかを調べたコクラン・レビュー
- 発表年
- 2021年
- 研究機関
- スイス・チューリッヒ大学
- 掲載誌
- The Cochrane database of systematic reviews
- 研究の種類
- システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
- 対象
- 4,551人
- 結果の向き
- 良い方向
学校・職場の加湿を調べた13件のコクラン・レビュー。学校の比較試験6件のうち4件で、加湿すると欠席が減った。

目安は50〜60%です。加湿により学校の欠席は減りました。
学校や職場の加湿を調べたコクラン・レビュー(13件・4551人以上)で、学校の比較試験6件のうち4件で、加湿すると病気による欠席が減りました [1]。ただし、レビューによると、かぜなどの感染症にかかった人の数を結果にした研究はありません。根拠の確かさは低めです。欠席の数え方が研究ごとに違い、研究の作りにも弱さがあるためです。
学校での加湿の話です。
湿度は、厚生労働省が示す50〜60%が目安です。上げすぎると結露やカビにつながり、カビや湿気は子どもの呼吸器の感染症と関連しています [2]。湿度計で測りながら、結露が出ない範囲で加湿し、加湿器は水を替えて掃除しましょう。
この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。
| 項目 | 点 | 配点 | 何を見るか |
|---|---|---|---|
| 研究デザイン | 40 | 40 | いちばん信頼できる研究の種類 |
| 研究の量 | 14.8 | 20 | 研究件数と参加人数 |
| 一致度 | 25 | 25 | 結果の向きがそろっているか |
| 新しさ | 10 | 10 | 最新の研究が何年以内か |
| 精度 | 0 | 5 | 信頼区間が「差なし」をまたがないか |
合計 89.8 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、RCT のメタ解析 1 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「非常に低い」で、これを強度の上限にしています。 この上限により、強度を A から C に下げました。
配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。
部屋の湿度は、空気に含まれる水蒸気の量のことです。ふつうの湿度計が示す「相対湿度」は、その気温で空気が含める限度に対する割合で、気温が上がると同じ水蒸気でも数字が下がります。「絶対湿度」は空気中の水蒸気の重さそのもので、気温に左右されません。加湿器は、水を蒸気や霧にして室内の湿度を上げる家電です。
答えの中心は、スイスのチューリッヒ大学などの研究チームが2021年に発表したコクラン・レビューです [1]。コクラン・レビューは、決めた手順で比較試験を集め、結果を整理した報告のことです。学校や職場の加湿を調べた13件・4551人以上の研究が集められました。
| 研究の種類 | 学校・職場の加湿を調べた比較試験のコクラン・レビュー |
|---|---|
| 対象 | 学校や職場で過ごす子どもと大人(4551人以上) |
| 比べたもの | 室内を加湿した場合と、加湿しない場合 |
| 結果 | 学校の比較試験6件のうち4件で、病気による欠席が減った |
一方、レビューによると、かぜなどの感染症にかかった人の数を結果にした研究はありませんでした。
欠席の数え方は研究ごとに違い、結果をひとつの数値にまとめられませんでした。レビューは、根拠はとても不確かと判定しています。欠席が減った理由が、感染した人が減ったからなのかは、この結果からは分かりません。
保育園の教室を加湿した研究では、加湿しない教室より、空気やおもちゃなどから見つかるインフルエンザAウイルスの数が減りました [3]。インフルエンザのような症状の子は、加湿しない教室で2.3倍いましたが、原因と結果の関係は分からないとされています。冬の小学校では、教室用の加湿器を4時間使うと絶対湿度が4 mb上がり、計算上は1時間後に生き残るウイルスの割合が30ポイント下がる水準でした [4]。こちらは感染そのものを調べていません。
ジュネーブの役所で働く1321人を冬に調べた1978年に報告された調査では、加湿器のある部屋とない部屋で、呼吸器の感染症の多さに有意な差はありませんでした [5]。ただし部屋の湿度は、加湿器ありが33%、なしが30%でほとんど変わりませんでした。加湿器を置いても湿度が上がらなければ、差が出ない結果になります。
加湿器の有無で、呼吸器の感染症の多さに差はありませんでした。
厚生労働省は、乾燥しやすい室内では、加湿器などで湿度50〜60%を保つことも効果的だとしています。ただし、この数値を、かぜやインフルエンザにかかる人の数で確かめた研究は見つかっていません。実験や総説(研究をまとめた論文)は、中くらいの湿度でウイルスが弱まりやすいとしますが、結果は割れています。
人を調べた観察研究では、湿度が高いと感染が少ない結果が目立ちますが、ウイルスや地域で割れています。
どれも観察研究で、湿度の違いが原因とは言えません。
湿度を上げすぎる害も、研究にあります。高所得国の子どもを調べた30件のまとめでは、家に湿気があると呼吸器の感染症が多い関連が見られました(オッズ比1.28。1より大きいほど多い)[2]。子どもを追跡したコホート研究11件では、カビのある家で育つと、のちにぜんそくになるリスクが15%高い関連でした [14]。湿気やカビにさらされると、新しくゼーゼーする息が出るリスクが上がるというレビューもあります(根拠の確実性は中くらい)[16]。どれも、結露やカビが出るほど湿った家の話で、加湿器の使い方を調べたものではありません。乳幼児やぜんそくなど持病のある人は、加湿の方法を医師や薬剤師に確認してください。
結露やカビが出るなら、加湿を弱めて換気しましょう。
加湿した学校で欠席が減った例はありますが、かぜやインフルエンザにかかる人が減るかは確かめられていません。
湿度の目安は厚生労働省の50〜60%ですが、感染の数で確かめた数値ではなく、上げすぎはカビと関連しています。
加湿するなら、湿度計で測りながら結露が出ない範囲にとどめ、加湿器の手入れも忘れずに。
高ければよいとは言えません。実験では湿度が100%近いと、飛沫の中のウイルスが生き残りやすい結果があります [[23056454]]。家の湿気やカビは、子どもの呼吸器の感染症やぜんそくと関連しています [[37482434]]。結露が出るなら上げすぎです。
研究では確かめられていません。コクラン・レビューによると、加湿でかかる人が減るかを数えた研究はなく [[34891215]]、厚生労働省は加湿を対策の一つとして挙げています。
動物の感染実験などを解析し直した研究では、インフルエンザのうつりやすさは、相対湿度より絶対湿度でよく説明できました [[19204283]]。ただし50〜60%や40〜60%の目安は相対湿度(%)で示されたもので、ふつうの湿度計の表示と合います。
学校・職場の加湿を調べた13件のコクラン・レビュー。学校の比較試験6件のうち4件で、加湿すると欠席が減った。
30件のメタ解析。家に湿気があると、子どもの呼吸器の感染症が多かった(オッズ比1.28)。
保育園の教室を加湿すると、空気やおもちゃから見つかるインフルエンザAウイルスの数が減った。
冬の小学校で教室用の加湿器を4時間使うと、絶対湿度が4 mb上がった。感染そのものは調べていない。
ジュネーブの役所で働く1321人の調査。加湿器の有無で、呼吸器の感染症の多さに差はなかった。
せきをする人形を使った実験。湿度が低いと感染力を保ちやすく、湿度43%以上では保ちにくかった。
室内の湿度の総説。感染の危険が最も低いのは湿度40〜60%の範囲だとする研究が増えているとまとめた。
人の気道の分泌物を加えたウイルスは、調べたどの湿度でも1時間、感染力を保った。
飛沫の実験。湿度が100%近くか約50%未満のときに最も生き残りやすく、その間では弱まった。
香港の高齢者285人を追跡した観察研究。寒い季節に家の中の絶対湿度が高いと、急性の呼吸器の病気が少なかった。
108件の研究のメタ解析。湿度が高いとインフルエンザBが少なく、エンテロウイルスは多かった。
日本の47都道府県のデータ。絶対湿度が低くなる日が早く来た年ほど、流行が早く始まる傾向があった。
沖縄の7年間の調査。インフルエンザAは湿度が低いほど多く、Bは湿度が高いときに多かった。
子どもを追跡したコホート研究11件のまとめで、カビのある家で育つと、のちにぜんそくになるリスクが15%高かった。
日本の214施設の調査。2011〜2021年に加湿器肺の人が430人見つかり、年々増えていた。
湿気・カビを調べた48件の系統的レビュー。湿気やカビにさらされると、新しくゼーゼーする息が出るリスクが上がった。
判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。