[1]湿気・カビで傷んだ建物の修繕が呼吸器の症状と喘息に与える影響
- 発表年
- 2015年
- 研究機関
- フィンランド・労働衛生研究所
- 掲載誌
- The Cochrane database of systematic reviews
- 研究の種類
- システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
- 対象
- 8,028人
- 結果の向き
- 良い方向
大人では修繕でぜーぜーのオッズが0.64倍に下がった。子どもでは喘息の日数に差がなかった。

大人のぜーぜーは軽くなります。子どもでは喘息の日数に差がありませんでした。
湿気やカビで傷んだ家を直す試験をまとめたコクランレビュー(12件・8028人)で、大人のぜーぜー(喘鳴)が出るオッズは0.64倍に下がりました [1]。鼻炎も減っています。子どもでは喘息の日数や救急受診に差がありませんでした。根拠の確かさは中程度です。修繕の中身が掃除だけから大規模な改修まで違いが大きいためです。
家の湿気やカビの被害を直した場合の話です。
カビが見えるなら、雨漏りや水回りの原因を直し、カビを取り除くことが、研究で効果が確かめられた方法です。除湿機は、原因を直したあとの補助と考えるのが現実的です。せきや息苦しさが続くときは、医師に相談してください。
この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。
| 項目 | 点 | 配点 | 何を見るか |
|---|---|---|---|
| 研究デザイン | 40 | 40 | いちばん信頼できる研究の種類 |
| 研究の量 | 17.2 | 20 | 研究件数と参加人数 |
| 一致度 | 25 | 25 | 結果の向きがそろっているか |
| 新しさ | 3 | 10 | 最新の研究が何年以内か |
| 精度 | 5 | 5 | 信頼区間が「差なし」をまたがないか |
合計 90.2 点を、エビデンス強度 B の範囲(55〜84 点)に収めて、スコアは 84 点です。 判定に使った研究は、RCT のメタ解析 1 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「中程度」で、これを強度の上限にしています。 この上限により、強度を A から B に下げました。
配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。
雨漏りや水回りの不具合を直し、カビを取り除き、換気や断熱を整えることです。湿気やカビは、喘息やせきと関連があるとされ、結露の多い冬に気になる人が増えます。研究では、修繕の中身が掃除だけの場合から、大がかりな改修まで、さまざまなものが含まれています。
答えの中心は、フィンランドの労働衛生研究所などの研究チームが2015年に発表したコクランレビューです [1]。コクランレビューとは、決めた手順で試験を集めて結果をまとめる方法です。湿気やカビの被害を直す12件の研究・8028人が集められました。
| 研究の種類 | 修繕の研究を集めたコクランレビュー(くじ引きの試験3件と、修繕の前後を比べた研究9件) |
|---|---|
| 対象 | 湿気やカビの被害がある家・職場・学校に住む人、働く人(喘息の人を含む) |
| 比べたもの | 修繕した場合と、何もしない・情報を渡すだけ・あとで修繕する場合 |
| 結果 | 大人ではぜーぜー(喘鳴)が出るオッズが0.64倍。子どもでは喘息の日数や救急受診に差なし |
オッズは「起こりやすさの比」のことです。鼻炎も0.57倍に減りました(2件の研究)。
同じレビューで、子どもは喘息の日数や救急受診に差がありませんでした [1]。一方、カビのある家に住む喘息の子ども62人の試験では、水の浸入を止める修理などをした群で、症状のある日が減りました [2]。喘息の人の家でカビを除去し、防カビ剤と換気扇を付けた試験では、症状と薬の使用は減ったものの、ピークフロー(息を吐く強さ)など客観的な指標には差がありませんでした [3]。
喘息の日数と救急受診は、修繕してもしなくても同じでした。
カビのある家に住む子どもは、せきなどの呼吸器の症状のオッズが1.76倍でした。高所得国の子どもの研究30件のまとめです [4]。のちに喘息になるリスクも、人を追いかけて調べたコホート研究11件のまとめで、15%高い関連がありました [5]。長引くせきでも、カビはオッズ1.64倍と関連していました [6]。ただし、これは家に住む人を比べた観察研究で、カビが原因だと証明したものではありません。
ここは結果が割れています。根拠の確かさは低めです。試験が2〜3本と少なく、結果がそろっていないためです。
カビの除去を含む8種類のアレルゲン対策を調べたレビューでは、単独の対策は喘息の指標の改善とおおむね関連しませんでした [11]。
大人の結果は、家を直す前後で症状を比べた試験が中心です。ぜーぜーなどの自己申告を使う試験が多く、客観的な指標では差がない試験もありました [3]。カビの除去や掃除では、ほこりやカビの胞子を吸い込むことがあります。喘息のある人は、自分で作業せず、周りの人や業者に頼むと安全です。薬を飲んでいる人、せきが長く続く人は、医師に相談してください。
症状が軽くなっても、薬の調整は医師と相談して進めてください。
家の湿気やカビの被害を直すと、大人のぜーぜーなど喘息の症状は減ります。
子どもでは、喘息の日数に差が出なかった点に注意が必要です。
カビの原因を直すことを第一にして、除湿機は補助として使いましょう。
研究では確かめられていません。置き型の除湿機そのものを調べた試験は見つかっていません。調べられているのは除湿のための機械換気で、主な評価項目に差がなかった試験があります。
喘息の日数や救急受診には、差がありませんでした。ただし、症状のある日が減った小さな試験もあり、結果は割れています。医師と相談しながら進めてください。
レビューの修繕には掃除だけの研究も含まれますが、掃除だけの効果は分けて示されていません。水の浸入を止める修理をした子どもの試験では、症状のある日が減っています [[17035145]]。
調査の結果は割れています。台湾の調査では、大人になってから喘息になった人で、除湿機を使う人ほど発作止めの薬の使用が少なくなりました [[26418355]]。別の調査では、除湿機のある家と症状が出ることが関連していました [[31791294]]。どちらも観察研究で、除湿機の効果は分かりません。
大人では修繕でぜーぜーのオッズが0.64倍に下がった。子どもでは喘息の日数に差がなかった。
カビのある家の喘息の子ども62人で、修理をした群は症状のある日が減った。
症状と薬の使用は減ったが、客観的な指標には差がなかった。
家のカビはせきなどの呼吸器の症状のオッズ1.76倍と関連していた。
コホート研究11件で、喘息になるリスクが15%高いことと関連していた。
子ども97,462人を含む研究で、カビは長引くせきのオッズ1.64倍と関連していた。
子ども83人で、ぜーぜーの割合は減ったが症状のある日数に差はなかった。
親が答えた喘息の生活の質が、12か月後に7.1点高かった。
断熱した家で、ぜーぜーの自己申告のオッズが0.57倍になった。
喘息の大人120人の試験で、朝のピークフローは偽の装置と差がなかった。
単独の対策は、喘息の指標の改善とおおむね関連しなかった。
判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。