手洗いや消毒で家族への胃腸炎のうつりは防げる?

手洗いや消毒で家族への胃腸炎のうつりは防げる?
読了目安 5〜7分最終更新日 2026.11.06
答え効く

防げます。保育園・学校で石けんの手洗いを指導すると、下痢になる回数が0.70倍に減ります。

根拠

保育園・学校で手洗いを指導した比較試験9件・4664人をまとめた解析で、下痢の回数は何もしない場合の0.70倍でした [1]。アルコールの手指消毒剤も、保育園に通う子どもがいる292家族で、家族の中で胃腸炎がうつる率が0.41倍に下がりました [2]。根拠の確かさは低めです。主な試験が保育園・学校で行われ、家庭の中を直接調べた試験が1本だけのためです。

この答えの範囲

子どもの集まる場所での手洗いの結果が中心で、家庭内を直接調べたのは消毒剤の試験1本です。家の消毒や抗菌タイプの製品については、効果を示せていません。

じゃあ、どうする?

石けんと流水の手洗いを基本に、トイレのあと・食事や調理の前・おむつ替えのあとに行いましょう。流水で洗えない場面では、アルコールの手指消毒剤が補助になります。抗菌タイプの洗剤を選ばなくても、差は示されていません [3]。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。高い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。8 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。おおむね一致
判定の内訳を見る(スコア 96 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量15.920研究件数と参加人数
一致度2525結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 95.9 点を、エビデンス強度 A の範囲(75〜100 点)に収めて、スコアは 96 点です。 判定に使った研究は、RCT のメタ解析 1 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「高い」で、これを強度の上限にしています。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

胃腸炎とは

胃腸炎は、ウイルスや細菌で起こる、吐き気・嘔吐・下痢の病気です。ノロウイルスなどが原因になり、感染した人の便や吐いた物から手を介してうつるとされています。家族の誰かが感染すると、家庭内に広がりやすいのが特徴です。注意点は、症状が治まったあともしばらくウイルスが出ることがあるとされている点です。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、ナイジェリアのカラバル大学などの研究チームが2021年に発表したコクランの系統的レビューです [1]。系統的レビューとは、決めた手順で関連する試験を集め、結果を整理する方法です。主に先進国の保育園・学校で、手洗いを指導した試験が集められました。

研究の種類手洗い指導の比較試験をまとめたメタ解析
対象先進国の保育園・学校の子ども(9件・4664人)
比べたもの手洗いの指導(石けんの配布を含むこともある)と、何もしない場合
結果下痢になる回数が、何もしない場合の0.70倍に減った
まとめて分析した結果手洗いを指導すると、下痢になる回数は何もしない場合の0.70倍に減りました [1]。

家庭や学校など地域での手洗いを調べた30件のメタ解析でも、胃腸の病気は31%減っています [4]。

注意したいのは、この結果が保育園・学校の研究を中心にしていることです。家庭の中だけを調べた研究ではありません。それでも、手洗いで下痢が減るという向きは、複数のまとめでそろっています。

家庭内を直接調べた試験

家庭の中でのうつりを直接調べた試験は、見つかった範囲で1本です。アメリカのボストン小児病院などの研究チームが2005年に発表した試験で、保育園に通う子どもがいる292家族が対象でした [2]。家にアルコールの手指消毒剤を置き、手洗いの資料を配った家庭では、家族の中で胃腸炎がうつる率が0.41倍に下がりました。かぜなど呼吸器の病気のうつりには差がありませんでした。

アルコール手指消毒は手洗いに足せる?

オーストラリアのアデレード大学などの研究チームによる2020年のコクランのレビューでは、保育園・学校で水ですすがない手指消毒剤を使うと、胃腸炎による欠席が0.79倍に減りました(RCT4件)[5]。根拠の確かさは低めです。試験の方法に偏りが入りやすく、結果にもばらつきがあるためです。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

ニュージーランドの小学校68校で教室に手指消毒剤を置いた試験では、病気による欠席は減らず、そのあと家族がかかる回数にも差がありませんでした(2443人)[6]。どちらの群にも手洗いの授業をしていて、新型インフルエンザの流行中でもあり、どの学校でも手洗いが増えていた可能性があります。

差がなかった試験小学校68校の2443人

消毒剤を置いても、欠席や家族への広がりに差はありませんでした。

家の消毒や抗菌製品は?

表面の消毒は、手指消毒と組み合わせた試験が中心で、どちらが効いたかは分けられません。

  • アメリカの小学校の試験:アルコールの消毒剤と机などの表面の消毒を組み合わせ、8週間続けると、胃腸炎による欠席が減りました。教室の表面からノロウイルスが見つかる割合は、実施した教室で9%、ふだんどおりの教室で29%でした(285人)[7]
  • 中国の家庭と幼稚園の試験:抗菌の手洗い用品と物の表面の消毒用品を配ると、子どもの下痢や胃腸の病気が少なくなりました(393人)[8]
  • 抗菌タイプだけの試験:アメリカの家庭238世帯・1178人で、掃除・洗濯・手洗いを抗菌タイプの製品にしても、ふつうの製品と比べて下痢や嘔吐に差はありませんでした。中身が分からない包装の市販品を48週間使う二重盲検の試験です [3]

つまり、手洗いと消毒を組み合わせた取り組みには効果がありました。ただ、抗菌タイプの製品を選ぶ必要は、試験では示されていません。1960年から2007年までの30件のまとめでも、普通の石けんの手洗いがいちばん効果が大きく、抗菌石けんを足しても上乗せはほとんどありませんでした [4]。

よく言われていることは本当?

  • 石けんと流水の手洗いがいちばん大切本当です。 下痢の回数が0.70倍に減りました [1]
  • 家での手指消毒・手洗いの徹底が家族への広がりを防ぐ効きます。 家庭の試験で、うつる率が0.41倍に下がりました。根拠の確かさは低めです [2]
  • アルコール消毒はノロウイルスに効きにくいウイルスそのものへの効き目を人で比べた研究は見つかっていません。 人の試験では、胃腸炎による欠席が減りました [5]。自治体の資料は、ノロウイルスにはアルコールが効きにくいとしています
  • 吐いた物や便は塩素系で消毒する塩素系だけを人で試した研究は見つかっていません。 表面の消毒を手指消毒と組み合わせた試験では、胃腸の病気や欠席が減りました。ただし引いた試験は塩素系ではなく、第四級アンモニウムの除菌シートを使っています [7]
  • 吐いた物は手袋・マスクで処理、タオルは分ける研究が見つかっていません。 感染対策の手順として自治体の資料が勧めているものです
  • タオルの共用をやめる家庭でタオルを分けることの効果を感染で比べた研究は見つかっていません。 自治体の資料が、感染対策の手順として勧めています
  • 下痢が治ってもウイルスは出続ける効果を比べる研究ではなく、今回は確かめていません

02注意点

手洗いの試験は、保育園・学校で行われたものが中心です。家庭の消毒剤の試験は、保育園に通う子どもがいる家庭を5か月間追ったもので、期間や対象の違う家庭には当てはまらない場合があります [2]。肌のトラブルは、消毒剤を使わない場合と差がありませんでした [5]。乳幼児や高齢の人が下痢や嘔吐でぐったりしているとき、水分がとれないときは、早めに医師に相談してください。

手洗いは石けんと流水が基本

消毒剤は、水で洗えないときに足す補助として使いましょう。

03まとめ

石けんの手洗いで下痢は減り、アルコール消毒も家族内のうつりを減らしました。
ただし家庭内を直接調べた試験は少なく、根拠の確かさは低めです。
洗剤を抗菌タイプにするより、まず石けんと流水の手洗いを丁寧に続けましょう。

04よくある質問

Qアルコール消毒だけで手洗いは省けますか?

研究では、手洗いに消毒剤を足したときの結果を調べています。消毒剤だけで手洗いの代わりになるかは、今回の研究では確かめられていません。

Q抗菌タイプの洗剤や石けんを選ぶべきですか?

選ぶ必要は示されていません。家庭238世帯の試験で、抗菌タイプとふつうの製品に下痢や嘔吐の差はありませんでした [[14996673]]。

Q吐いた物の処理に塩素系の消毒は必要ですか?

塩素系だけを人で試した研究は見つかっていません。自治体の資料が勧める手順として、手袋とマスクをつけ、換気して処理します。

Qタオルを分けると家族にうつりにくくなりますか?

感染で比べた研究は見つかっておらず、研究では確かめられていません。

05参照した論文

判定に使った主な論文(8本)

[1]下痢を防ぐ手洗い指導のコクランレビュー

発表年
2021年
研究機関
ナイジェリア・カラバル大学
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
4,664人
結果の向き
良い方向

手洗いの指導で下痢の回数が何もしない場合の0.70倍に減った(9件・4664人)。

[2]保育園児のいる家庭で手指消毒剤が胃腸炎のうつりに与える影響

発表年
2005年
研究機関
アメリカ・ボストン小児病院
掲載誌
Pediatrics
研究の種類
ランダム化比較試験(クラスター)学校や病院などの単位でくじ引きのように分け、結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
良い方向

292家族で、家族内の胃腸炎のうつる率が0.41倍に下がった。

[3]抗菌タイプの家庭用製品の二重盲検試験

発表年
2004年
研究機関
アメリカ・コロンビア大学
掲載誌
Annals of internal medicine
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
1,178人
結果の向き
差なし

抗菌タイプとふつうの製品で、下痢や嘔吐に差はなかった(238世帯・1178人)。

[4]手洗いが胃腸の病気や呼吸器の病気に与える影響のメタ解析

発表年
2008年
研究機関
アメリカ・ミシガン大学
掲載誌
American journal of public health
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究30件を統合
結果の向き
良い方向

地域での手洗いの改善で胃腸の病気が31%減った(30件)。

[5]保育園・学校での手指消毒剤のコクランレビュー

発表年
2020年
研究機関
オーストラリア・アデレード大学
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
30,747人
結果の向き
良い方向

胃腸炎による欠席が0.79倍に減った(4件)。

[6]小学校の教室に手指消毒剤を置く試験

発表年
2014年
研究機関
ニュージーランド・オタゴ大学
掲載誌
PLoS medicine
研究の種類
ランダム化比較試験(クラスター)学校や病院などの単位でくじ引きのように分け、結果を比べる試験。
対象
2,443人
結果の向き
差なし

欠席や家族がかかる回数に差はなかった(2443人)。

[7]小学校での手指消毒と表面消毒の試験

発表年
2008年
研究機関
アメリカ・ボストン小児病院
掲載誌
Pediatrics
研究の種類
ランダム化比較試験(クラスター)学校や病院などの単位でくじ引きのように分け、結果を比べる試験。
対象
285人
結果の向き
良い方向

胃腸炎による欠席が減り、表面のノロウイルスは9%と少なかった(285人)。

[8]家庭と幼稚園での手洗いと表面消毒の試験

発表年
2015年
研究機関
中国・中国疾病予防コントロールセンター
掲載誌
Biomedical and environmental sciences : BES
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
393人
結果の向き
良い方向

子どもの下痢や胃腸の病気が少なくなった(393人)。

ほかに参考にした論文(5本)

判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。