ハンドクリームは手荒れに効く?

ハンドクリームは手荒れに効く?
読了目安 4〜6分最終更新日 2026.11.06
答え効かない

荒れてしまった手のぶり返しを遅らせます。荒れる前の予防には効きません。

根拠

治療で治まった手湿疹の53人を調べた試験で、ぶり返すまでの期間の中央値は、尿素入りの保湿剤を塗った群が20日、塗らない群が2日でした [1]。一方、水仕事のある人507人を調べた3件のまとめでは、手荒れが出たのは塗った群13%、塗らない群19%でした。研究3件で、予防の効果は確認されていません [2]。根拠の確かさは低めです。研究の数が少なく、研究の作りにも弱さがあるためです。

この答えの範囲

働く人や医療従事者の手荒れの研究です。ぶり返しの試験は 1 件・企業の研究部門によるもので、赤ちゃんや子どもは対象外です。

じゃあ、どうする?

手が荒れやすい人は、荒れる前から塗って損はありません。ぶり返しを遅らせる目的なら、治まったあとも毎日塗り続けてください。成分の違いで差が出た研究は少ないので、使い心地がよく続けられるものを選ぶのが現実的です。赤みやひび割れが強いときは、皮膚科で薬を相談しましょう [3]。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。低い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。12 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。一部で結果が異なる
判定の内訳を見る(スコア 64 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量10.820研究件数と参加人数
一致度15.325結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度25信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 78.1 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 3 本・RCT のメタ解析 1 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「低い」で、これを強度の上限にしています。 この上限により、強度を B から C に下げました。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

ハンドクリームとは

ハンドクリームは、手の乾燥を防ぐために塗る保湿剤です。水分を保つ成分や、油で手の表面にふたをする成分が入っていて、尿素・グリセリン・セラミド・ワセリンなど種類があります。手荒れは、乾燥・赤み・ひび割れが出る状態で、水や洗剤に触れる回数が多いと起こりやすくなります。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

荒れる前に塗ると、手荒れは防げる?

答えの中心は、ドイツのドレスデン工科大学などの研究チームが2018年に発表したコクランレビューです [2]。コクランレビューとは、決めた手順で試験を集めて結果をまとめる方法です。

研究の種類水仕事による手荒れの予防を調べた比較試験のまとめ
対象水や洗剤・薬品に触れる仕事の人(507人・3件)
比べたもの保湿剤を使う群と、使わない群
結果手荒れが出たのは使った群13%、使わない群19%
まとめて分析した結果塗った群のほうが手荒れは少なめでしたが、差ははっきりしませんでした。

信頼区間が 1 をまたぐ結果で、研究の質は低いと評価されています [2]。

確かめた試験が少なく、人数も多くないため、根拠の確かさは低めです。手洗いを 1 日15回、2週間続けた健康な大人132人の実験では、石けんだけの群は手荒れの点数が悪くなり、手洗いのあとに保湿剤を塗った群は変化がありませんでした [4]。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

病院の病棟にクリームの容器を置いて使用を促した試験では、1年後の手荒れの改善に差はありませんでした [5]。これは塗るかどうかの比較ではなく、使うよう促す取り組みの比較で、対照の病棟でもクリームは使えました。

差がなかった試験医療従事者(285人の病棟と216人の病棟)

1年後の脱落が約4割あり、手荒れの点数は導入した病棟で6.2点、対照で4.2点下がりました [5]。

すでに荒れた手には、ぶり返しを遅らせる

手湿疹が治療で治まった53人を、尿素5%の保湿剤を塗る群と、何も塗らない群に分けた試験があります [1]。ぶり返すまでの期間の中央値は、塗った群が20日、塗らない群が2日でした。約10倍の差です。

ただし、どちらの群も26週以内に90%がぶり返し、ぶり返したときの重さに差はありませんでした。企業の研究部門が行った、塗るかどうかを伏せない試験です。根拠の確かさは低めです。

よく言われていることは本当?

  • 手洗いや水仕事のたびに塗ると手荒れを防げる効きません。 13%と19%で、塗るほうが少なめでしたが、偶然の範囲でした [2]。くわしくは手洗いのあとに保湿すると手荒れは防げる?へ。
  • できてしまった手荒れがハンドクリームで治るぶり返しを遅らせることは確かめられています。 治すという結果までは、保湿剤だけを調べた試験が見つかっていません [1]。
  • 尿素・セラミドなどの有効成分入りのほうが効くほぼ差はありません。 手湿疹のRCT 4件(計215人)のうち3件で、ワセリンなどのふつうの保湿剤と差がありませんでした [6] [7] [8]。差が出た1件(102人)は、セラミド入りを1日3回塗る群と、好きなクリームを必要なときに塗る群の比較で、塗る回数も違いました [9]。
  • 寝る前にたっぷり塗って綿の手袋をすると効く研究が見つかりません。 保湿剤に手袋を重ねた方法を、塗るだけと比べたヒトの試験は確認できませんでした。
  • 強くこすり込まず、やさしく塗るほうがよい研究が見つかりません。 塗り方を比べた試験はありませんでした。
  • ひどい手荒れはクリームだけでは足りない研究と合っています。 ステロイドの塗り薬が治療の第一選択とされています [10]。

成分で選ぶなら

セラミド入りのクリームを調べた試験は、手術室の看護師35人で、朝晩7日間塗った群のほうが手の乾燥の点数が良くなりました [11]。ただし人数が少なく、期間も短い試験です。成分の差より、塗る回数のほうが影響している可能性があり、ワセリンとの比較はワセリンで乾燥肌は良くなる?にまとめています。

02注意点

手洗いの回数が多いこと自体が、手湿疹の増えやすさと関連しています。観察研究45件のまとめでは、毎日8〜10回以上の手洗いでリスク比は1.51でした [12]。保湿は、洗う回数を減らす工夫と組み合わせるのが現実的です。赤み・かゆみ・ひび割れが続くときや、持病や服薬がある人は、皮膚科の医師や薬剤師に相談してください。

塗っても治まらない手荒れは、薬が必要なことがある

手湿疹の治療では、ステロイドの塗り薬が第一選択とされ、使う期間は医師が決めます [10]。

03まとめ

治まった手荒れのぶり返しは、保湿剤で遅らせられます。
荒れる前の予防には効きません。13%と19%で、研究の質も低めです。
手荒れが多い人は、使い心地のよいものを毎日続け、ひどいときは皮膚科へ。

04よくある質問

Q尿素入りのほうが、ふつうのハンドクリームより効きますか?

手湿疹のRCT 4件のうち3件で、特別な成分入りとワセリンなどのふつうの保湿剤に差はありませんでした。成分より、毎日続けることが大事と考えられます。

Qヘパリン類似物質のクリームは手荒れに効きますか?

手荒れの試験は見つかっていないため、研究では確かめられていません。

Q何回塗ればいいですか?

回数を比べた試験は見つかっていません。看護師の試験では朝晩の 2 回、セラミドの試験では 1 日 3 回で調べています [[42949579]] [[36939821]]。

Q塗ると、かえって肌が刺激に弱くなりませんか?

健康な人の前腕に4週間塗った実験で、刺激物を貼ったあとの水分の逃げ方が大きくなった報告があります [[10086859]]。手ではなく前腕の実験で、1 件だけです。

05参照した論文

判定に使った主な論文(12本)

[1]バリアを強める保湿剤で手湿疹の再発を防ぐ試験

発表年
2010年
研究機関
スウェーデン・企業の研究部門
掲載誌
Acta dermato-venereologica
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
53人
結果の向き
良い方向

治まった手湿疹の53人で、ぶり返すまでの期間は塗った群が20日、塗らない群が2日だった。

[2]水仕事による手荒れを防ぐ方法のコクランレビュー

発表年
2018年
研究機関
ドイツ・ドレスデン工科大学
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
507人
結果の向き
差なし

手荒れのない働く人507人(RCT3件)で、手荒れが出たのは使った群13%、使わない群19%。差ははっきりしなかった。

[3]手湿疹の治療のコクランレビュー

発表年
2019年
研究機関
オランダ・Christoffers WAほかの研究チーム
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
125人
結果の向き
良い方向

手湿疹のRCT60件・5469人のまとめ。ステロイドの塗り薬の効果を整理している。

[4]手洗いによる皮膚炎を防ぐ保湿剤を比べた二重盲検試験

発表年
2010年
研究機関
イギリス・リーズ大学
掲載誌
The British journal of dermatology
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
132人
結果の向き
良い方向

1日15回の手洗いを2週間続けた132人で、保湿剤を塗った群は手荒れの点数が変わらなかった。

[5]医療従事者の接触皮膚炎を防ぐスキンケアプログラム(Healthy Hands)の試験

発表年
2019年
研究機関
オランダ・アムステルダム公衆衛生研究所
掲載誌
Contact dermatitis
研究の種類
ランダム化比較試験(クラスター)学校や病院などの単位でくじ引きのように分け、結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
差なし

病棟にクリームの容器を置いて使用を促しても、1年後の手荒れの改善に差はなかった。

[6]手湿疹で、肌の脂質入り保湿剤とワセリン主成分の保湿剤を比べた試験

発表年
2003年
研究機関
オランダ・ナイメーヘン大学医療センター
掲載誌
Contact dermatitis
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
30人
結果の向き
差なし

慢性の手湿疹30人で、どちらの保湿剤も湿疹を良くし、差はなかった。

[7]ココナッツ油とグリセリンの保湿剤で手荒れの再発を防ぐ試験

発表年
2024年
研究機関
インドネシア・インドネシア大学
掲載誌
Scientific reports
研究の種類
ランダム化比較試験(クロスオーバー)参加者が順番を変えながら複数の条件を体験し、結果を比べる試験。
対象
32人
結果の向き
差なし

染め物の職人32人で、ココナッツ油とグリセリンのクリームとグリセリンだけのクリームの効果は同じだった。

[8]医療従事者の手湿疹に対する保湿クリームの比較試験

発表年
2023年
研究機関
イタリア・マッジョーレ・デッラ・カリタ大学病院
掲載誌
The Journal of dermatological treatment
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
51人
結果の向き
差なし

手湿疹のある医療従事者51人で、保湿をうたうクリームとふつうの保湿クリームの差ははっきりしなかった。

[9]セラミド入りクリームと個別指導による手の接触皮膚炎の二次予防の試験

発表年
2023年
研究機関
イタリア・トリエステ大学
掲載誌
Dermatitis : contact, atopic, occupational, drug
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
102人
結果の向き
良い方向

手の接触皮膚炎のある働く人102人で、セラミド入りを1日3回塗った群は改善しやすかった(オッズ比2.6)。

[10]手湿疹の診断・予防・治療のガイドライン

発表年
2015年
研究機関
Diepgen TLほかの研究チーム
掲載誌
Journal der Deutschen Dermatologischen Gesellschaft = Journal of the German Society of Dermatology : JDDG
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

ステロイドの塗り薬を手湿疹の第一選択とし、6週間を超える使用は医師の管理のもとで行うとしている。

[11]手術室の看護師の肌のバリアに対するセラミド乳液の効果の試験

発表年
2026年
研究機関
Hara Kほかの研究チーム
掲載誌
AORN journal
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
35人
結果の向き
良い方向

手術室の看護師35人で、セラミド入りの乳液を朝晩7日間塗った群は手の乾燥の点数が良くなった。

[12]手指衛生と手湿疹の系統的レビューとメタ解析

発表年
2022年
研究機関
シンガポール・南洋理工大学
掲載誌
Contact dermatitis
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究45件を統合
結果の向き
悪い方向

観察研究45件で、毎日8〜10回以上の手洗いは手湿疹のなりやすさと関連していた(リスク比1.51)。

ほかに参考にした論文(5本)

判定「効かない」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。