[1]健康な大人の咀嚼と注意の持続に関するメタ解析
- 発表年
- 2019年
- 研究機関
- アメリカ・企業の研究部門
- 掲載誌
- Physiology & behavior
- 研究の種類
- システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
- 対象
- 研究21件を統合
- 結果の向き
- 良い方向
噛みながらだと注意の持続のテストの成績がわずかに良かった。効果は弱い。

わずかに上がります。ただし、差はごく小さいです。
健康な大人の、短い注意力テストの話です。眠気覚ましと記憶には効きません。睡眠不足でない人の試験では差が出ませんでした [3]。
作業を始める前に噛むのは、負担の少ない小さな後押しとして試せます。大きな上乗せは見込めないので、眠いときはガムに頼らず、仮眠や休憩を。記憶を上げたいときも、噛むより別の方法を選ぶほうが確実です。
この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。
| 項目 | 点 | 配点 | 何を見るか |
|---|---|---|---|
| 研究デザイン | 32 | 40 | いちばん信頼できる研究の種類 |
| 研究の量 | 13.9 | 20 | 研究件数と参加人数 |
| 一致度 | 15.5 | 25 | 結果の向きがそろっているか |
| 新しさ | 10 | 10 | 最新の研究が何年以内か |
| 精度 | 5 | 5 | 信頼区間が「差なし」をまたがないか |
合計 76.4 点を、エビデンス強度 B の範囲(55〜84 点)に収めて、スコアは 76 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 2 本・観察研究 1 本。
配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。
ガムは、飲み込まずに噛んで味わうお菓子です。気分転換や集中のために噛む人が多く、砂糖入りやシュガーレス、ミント味やフルーツ味など種類があります。研究では、味や香りを付けたふつうのガムがよく使われます。注意点は、あごに負担がかかる人もいることと、砂糖入りは虫歯が気になることです。
ここまでは一般的な説明で、研究で確かめたものではありません。
答えの中心は、企業の研究部門の研究者が2019年に発表したメタ解析です [1]。メタ解析とは、同じテーマの研究を集めて、結果を数字で合わせる方法です。健康な大人を対象にした21本の研究が集められました。
| 研究の種類 | 噛むことと注意の持続を調べた研究のメタ解析 |
|---|---|
| 対象 | 健康な大人(21本の研究) |
| 比べたもの | ガムなどを噛みながら作業する場合と、噛まない場合 |
| 結果 | 注意の持続のテストの成績がわずかに良かった |
差の大きさを表す効果量は約0.15で、研究では「弱い」と表現されています。研究どうしのばらつきは小さいです。
「注意の持続」とは、同じ作業に注意を向け続ける力です。差は統計的に意味があるとされましたが、信頼区間の端はほぼゼロに近く、「ぎりぎり差が出た」と読むのが正確です。
2025年の試験も同じ向きでした。健康な若い36人が、成分入りのガム、ふつうのガム、味をそろえた偽物(プラセボ)を順番に試したところ、ふつうのガムは偽物より、数字を見張るテストの誤りが減りました。噛んでいる間も、噛み終えた1時間後も同じでした [2]。
睡眠不足でない健康な大人58人が、昼間に40分のテストを2回受け、片方でガムを噛んだ2025年の試験では、成績にも眠気の評価にも意味のある差は出ませんでした [3]。この試験は、疲れていない人が短いテストを受ける条件でした。
注意力のテストの成績にも、眠気の自己評価にも差はありませんでした。
また、2012年の実験では、ガムで選んで注意を向ける力は良くなった一方、見張り作業の正確さは4分目に一時的に下がりました [4]。
理由は、研究ではまだ確かめられていません。脳波の研究では、噛んでいる間にだけ覚醒の高まりが報告され、噛むのをやめるとすぐに消える傾向でした [12]。作業の前に少し噛むと注意と作業記憶のテストの成績が良くなり、前頭部の脳波のまとまりも強まったという報告もありますが、噛んだ物がガムかは要旨に書かれていません [13]。どれも原因が証明されたわけではありません。
最初に紹介したメタ解析は、企業の研究部門の研究者によるものです。ただし、大学の研究チームの2025年の試験でも、同じ向きの結果と差がない結果の両方が出ており、結果は一方向に偏っていません [2] [3]。
また、効果は噛んでいる間、または直後の短いテストで調べられたもので、長時間の勉強や仕事の成績が上がるかは確かめられていません。あごに痛みや違和感がある人、持病や服薬のある人は、歯科医や医師に相談してください。
眠気の評価に差は出ていないため、眠いときは休憩や仮眠を優先してください。
ガムは、集中力のテストの成績をわずかに上げます。
眠気覚ましと記憶には、効くという結果が出ていません。
作業の前に気分転換として噛むのは試せますが、大きな効果は期待しないでください。
メタ解析からは、何分噛めばよいかは分かりません。2025年の試験では、噛んでいる間と、噛み終えた1時間後のどちらでも誤りが減りました [[39039933]]。
眠気には効きません。メタ解析でも睡眠不足でない人の試験でも、眠気の評価に差はありませんでした [[30611764]] [[41138598]]。眠気にはカフェインの記事 ([カフェインで集中力は上がる?](/evidence/caffeine-concentration)) や昼寝の記事 ([昼寝は何分がおすすめ?集中力と記憶力](/evidence/nap-concentration-memory)) も参考になります。
研究では確かめられていません。ガムで記憶の成績が良くならなかった試験が複数あります [[20132649]] [[17055609]]。
コーヒー(カフェイン)は、寝不足のときに効果がはっきりするとされています。ガムは眠気の評価に差が出ていません。仕事の集中については [コーヒーを飲むと仕事に集中できる?](/evidence/coffee-work-focus) で扱っています。
噛みながらだと注意の持続のテストの成績がわずかに良かった。効果は弱い。
ふつうのガムは偽物より、数字を見張るテストの誤りが減った。噛み終えた1時間後も同じ。
睡眠不足でない大人では、注意力のテストにも眠気の評価にも差がなかった。
選んで注意を向ける力は良くなったが、見張り作業の正確さは一時的に下がった。
味もにおいもない物を噛んでも、偽薬と比べて覚醒感や成績は変わらないか悪かった。
徹夜した学生で、夜中から噛んだ群は眠気の自己評価が低かった。
ガムで反応の速さや注意は良くなったが、記憶の成績は良くならなかった。
2つの実験のどちらでも、覚えるときや思い出すときに噛んでも記憶は変わらなかった。
噛みながらだと、文字を短い時間覚えておく記憶の成績がむしろ下がった。
ガムを噛むと、ミントの飴をなめたときより記憶などのテストの成績が良かった。
模擬面接の場面で、ガムを噛んだ人は不安の高まりが抑えられた。
前頭前野の血流が増えるなどの変化は見られるが、成績との結びつきはまだ言えない。
作業の前に少し噛むと、注意と作業記憶のテストの成績が良くなった。
判定「効くが、差はごく小さい」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。