軽い運動をすると、そのあと集中力は上がる?

軽い運動をすると、そのあと集中力は上がる?
読了目安 6〜8分最終更新日 2026.11.06
答え効く

上がります。ただし効果は小さいです。

根拠

一度の運動のあとは、注意力や頭の働きのテストの成績が良くなります。メタ解析30本(383研究・18347人)をまとめた2025年の研究で、効果量は0.33の小〜中くらいでした [1]。健康な若い大人113研究・4390人でも小さな改善(0.13)が出ています [2]。根拠の確かさは低めです。運動の長さや強さ、測る能力の種類で効果が変わるという解析と、変わらないという解析があり、結果がそろっていないためです [3] [1]。

この答えの範囲

主に健康な大人の、運動のあとに測った成績の話です。30分のウォーキングで差がなかった試験もあります。

じゃあ、どうする?

勉強や仕事の前に、歩く・階段を上るなどの軽い運動を数分入れる使い方が、研究の条件に近いです。座りっぱなしの合間なら、3〜5分の短い休憩でも改善が出ています [4]。運動は課題に入る前に終えましょう。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。低い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。13 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。おおむね一致
判定の内訳を見る(スコア 64 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量2020研究件数と参加人数
一致度2325結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 98 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 1 本・RCT のメタ解析 2 本・観察研究 3 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「低い」で、これを強度の上限にしています。 この上限により、強度を A から C に下げました。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

運動後の集中力とは

ここでいう集中力は、研究では「注意力」や「実行機能」のテストの成績で測られています。実行機能とは、気を散らすものを無視する、ルールを切り替える、一時的に覚えておく、といった頭の働きです。ウォーキングや自転車こぎなどを一度行ったあとに、座っていたときと成績を比べる研究が多く、この記事は一度の運動の直後を扱います。数週間続ける運動は別の話です。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、国立台湾師範大学の研究チームが2025年に発表した、メタ解析30本をまとめた研究です [1]。メタ解析とは、複数の研究の結果をまとめて、全体としてどの程度の違いがあるかを調べる方法です。

研究の種類一度の運動の効果を調べたメタ解析30本のまとめ
対象子どもから高齢者まで(383研究・18347人)
比べたもの一度の運動をした場合と、しなかった場合
結果頭の働きのテストの成績が小〜中くらい良くなった(効果量 0.33)
まとめて分析した結果一度の運動のあとは、頭の働きのテストの成績が小〜中くらい良くなりました(効果量 0.33)[1]。

注意力の課題に絞ると、効果量は0.37でした。

効果量は、運動した群としない群の差の大きさを表す数字です。数字が大きいほど差も大きくなりますが、0.33は「はっきり分かるが大きくはない」差です。この研究では、年齢・運動の強さ・種類・時間によって効果は変わらず、運動のあとに測ったときに効果が大きいという結果でした。

別のメタ解析も、同じ向きです。健康な若い大人113研究・4390人では、成績がわずかに良くなり(効果量 0.13)、反応も速くなりました [2]。気を散らすものに惑わされず答える課題では、50研究・2366人で反応が速くなりました [5]。ルールを切り替える課題では、22研究・1900人で少し良くなっています [6]。

何を検証したか

  • 注意力の課題: 効果量は0.37 [1]
  • 気を散らすものを無視する力: 反応が速くなった(50研究) [5]
  • ルールを切り替える力: 少し良くなった(22研究)。著者は日常生活での意味ははっきりしないとしています [6]
  • 一時的に覚えておく力と抑制: 良くなった [2]

軽い運動でも効くのか

運動の強さの違いは、研究で一致していません。ルールを切り替える課題では、軽い運動(-0.51)が中くらい(-0.24)やきつい運動(-0.29)より効果が大きく見えましたが、統計的にはっきりした差ではありませんでした [6]。一方、反応の速さへの効果は、中くらいの強さの運動で大きいという解析もあります [7]。何分が最適かも、研究で一致していません。

座りっぱなしの合間に体を動かす休憩を入れた、ランダム化クロスオーバー試験22件・418人のまとめでは、成績が少し良くなりました(効果量 0.13)[4]。軽い運動では効果があり(0.19)、中くらいの強さでははっきりしませんでした。3〜5分の短い休憩でも効果がありました(0.16)。この解析は、確実性を低いと評価しています。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

2026年に発表された、日本の産業技術総合研究所などの試験では、効果が見られませんでした [8]。健康な若い人17人と高齢者19人が、中くらいの強さのウォーキングを30分した日と、座っている日を入れ替えて比べました。運動の15分後と45分後に、MRIの中でルールを切り替える課題を行っています。成績に差はなく、脳の活動の一部にだけ違いがありました。

差がなかった試験健康な若い人17人と高齢者19人

30分のウォーキングの15分後と45分後に測りましたが、課題の成績は座っていた日と変わりませんでした。

この試験は人数が少なく、1本の結果です。メタ解析全体の「小さな改善」を打ち消すものではなく、効果が小さいため個々の試験では差が出ないことがある、と読むのが正確です。また、運動前の成績が低かった人ほど、有酸素運動のあとの伸びが大きいという個人データのメタ解析もあります [9]。

運動の最中はどうか

運動のあとは成績が良くなる一方、運動している最中は、運動を始めて20分までは下がったという解析があります(-0.14)[10]。ただし別の解析では、運動中も小さく良くなっていました(0.10)[3]。運動中の結果は一致していませんが、運動のあとに測ったときのほうが効果が大きいため、運動を終えてから課題に入るほうが研究の結果に合います。

よく言われていることは本当?

  • 軽い運動を数分〜30分すると、そのあと集中力が上がる効きます。 ただし効果は小さく、何分が最適かは研究で一致していません [1] [8]。
  • 授業や勉強の合間に体を動かすと、子どもの集中が続く授業に取り組む行動には効きます。 小学生の授業中の運動を調べたメタ解析で、課題に取り組む行動が増え、気がそれる行動が減りました(効果量 0.60)[11]。注意力のテストでは差がはっきりしない研究も多く、2〜6歳の幼児では一度体を動かしても差はありませんでした(効果量 0.04)[12]。
  • 運動すると記憶力が上がる別の記事で答えています。 運動と記憶力は運動すると記憶力は良くなるのか?をご覧ください。
  • 運動すると脳の血流が増えて頭が働く血流と集中力を結びつけて調べた解析は、集めた範囲で見つかっていません。 運動のあとに、注意にかかわる脳波(P300)の反応が大きくなったという報告はあります [13]。
  • 運動でドーパミンが出て、やる気や気分が上がるヒトを対象にした解析は、集めた範囲で見つかっていません。

02注意点

多くの研究は、ウォーキングや自転車こぎなどを一度行ったあとに、短い課題で測っています。運動の長さ・強さ、測る能力の種類で効果が変わったという解析 [3] と、年齢・強さ・種類・時間では変わらなかったという解析 [1] があり、結果はそろっていません。1日の中でどのくらい続くのかは、この記事の研究からは言えません。持病のある人、心臓や関節に不安のある人は、運動を始める前に医師に確認してください。

運動の最中ではなく、終えてから課題へ

運動中の結果は研究で一致していないため、課題に入る前に運動を終えるのが研究の条件に近い使い方です。

03まとめ

一度の運動のあとは、集中力や注意力のテストの成績が小さく良くなります。
効果は小さく、試験によっては差が出ないこともあるため、劇的な変化は期待しすぎないようにしましょう。
勉強や仕事の前に軽い運動を入れ、終えてから取りかかる使い方を試してください。

04よくある質問

Q何分運動すれば集中力が上がりますか?

何分が最適かは、研究で一致していません。座りっぱなしの合間の運動休憩では、3〜5分の短い休憩でも改善が出ました [[42337595]]。

Q運動しながら勉強や仕事をすると集中できますか?

運動している最中は、運動を始めて20分までは頭の働きのテストの成績が下がったという解析があります [[20381468]]。一方で、運動中も小さく良くなっていたという解析もあり [[22480735]]、結果は一致していません。運動のあとに測ったときのほうが効果が大きいため、運動を終えてから課題に入るほうが研究の結果に合います。

Q子どもにも効きますか?

子どもと青少年の解析でも、反応をこらえる力が少し良くなり(効果量 -0.25)、作業記憶は中くらい良くなりました(-0.72)[[33391074]]。ただし2〜6歳の幼児では差がありませんでした [[37665872]]。

Q運動すると記憶力も上がりますか?

記憶力への効果は、公開済みの別記事で詳しく扱っています。本文の「よく言われていることは本当?」からも案内しています。

05参照した論文

判定に使った主な論文(13本)

[1]一度の運動が頭の働きに与える効果のメタ解析のまとめ

発表年
2025年
研究機関
台湾・国立台湾師範大学
掲載誌
Psychological bulletin
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
18,347人
結果の向き
良い方向

メタ解析30本(383研究・18347人)をまとめ、一度の運動のあとは頭の働きの成績が小〜中くらい良くなった。

[2]若い大人の頭の働きに一度の運動が与える効果:ベイズ流メタ解析

発表年
2024年
研究機関
アメリカ・カリフォルニア大学サンタバーバラ校
掲載誌
Communications psychology
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
4,390人
結果の向き
良い方向

健康な若い大人113研究・4390人で、成績がわずかに良くなり反応も速くなった。

[3]一度の運動が頭の働きに与える効果のメタ解析

発表年
2012年
研究機関
アメリカ・ノースカロライナ大学グリーンズボロ校
掲載誌
Brain research
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究79件を統合
結果の向き
良い方向

79研究のメタ解析で、運動の直後の成績はわずかに良かった。効果の大きさは運動の長さや強さで変わった。

[4]長く座る合間の運動休憩が実行機能に与える効果:メタ解析

発表年
2026年
研究機関
中国・福建師範大学
掲載誌
The international journal of behavioral nutrition and physical activity
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
418人
結果の向き
良い方向

ランダム化クロスオーバー試験22件・418人で、成績が少し良くなった。確実性は低い。

[5]一度の有酸素運動が気を散らすものへの抑制に与える効果

発表年
2019年
研究機関
ドイツ・ドイツ体育大学ケルン
掲載誌
Frontiers in psychology
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
2,366人
結果の向き
良い方向

50研究・2366人のメタ解析で、一度の有酸素運動のあと干渉の抑制の反応が速くなった。

[6]一度の運動によるルール切り替え課題の改善:メタ解析

発表年
2021年
研究機関
ドイツ・ドイツ体育大学ケルン
掲載誌
Frontiers in psychology
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
1,900人
結果の向き
良い方向

健康な大人22研究・1900人で、ルールを切り替える課題の成績が少し良くなった。

[7]運動の強さが頭の働きの速さと正確さに与える効果

発表年
2012年
研究機関
イギリス・チチェスター大学
掲載誌
Brain and cognition
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

一度の運動で成績はわずかに良くなり、主に反応の速さが良くなっていた。

[8]一度の有酸素運動と課題の繰り返しが実行機能の脳活動に与える影響

発表年
2026年
研究機関
日本・産業技術総合研究所
掲載誌
Journal of magnetic resonance imaging : JMRI
研究の種類
ランダム化比較試験(クロスオーバー)参加者が順番を変えながら複数の条件を体験し、結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
差なし

若い人17人と高齢者19人が30分歩いた日と座った日で、課題の成績に差はなかった。

[9]一度の有酸素運動が実行機能に与える効果:個人データのメタ解析

発表年
2021年
研究機関
日本・神戸大学
掲載誌
Neuroscience and biobehavioral reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

運動前のテストの成績が低かった人ほど、有酸素運動のあとの成績の伸びが大きかった。

[10]運動による覚醒が頭の働きに与える影響のメタ回帰分析

発表年
2010年
研究機関
アメリカ・ジョージア大学
掲載誌
Brain research
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

運動のあとは成績が良くなったが、運動中は下がり、下がったのは運動を始めて20分までだった。

[11]授業中の運動が学業と運動量に与える効果:メタ解析

発表年
2017年
研究機関
オーストラリア・ディーキン大学
掲載誌
The international journal of behavioral nutrition and physical activity
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究16件を統合
結果の向き
良い方向

小学生の授業中の運動16研究で、課題に取り組む行動が増え、気がそれる行動が減った。

[12]幼児の頭の働きに対する運動の効果:メタ解析

発表年
2023年
研究機関
中国・香港浸会大学
掲載誌
Psychology of sport and exercise
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究16件を統合
結果の向き
差なし

2〜6歳の幼児では、一度体を動かしても頭の働きのテストの成績に差はなかった。

[13]一度の運動による脳波と頭の働きの変化のメタ解析

発表年
2023年
研究機関
台湾・台北医学大学
掲載誌
Neuropsychobiology
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

一度の運動のあとは頭の働きが良くなり、注意にかかわる脳波(P300)の反応も大きくなった。

ほかに参考にした論文(9本)

判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。