[1]運動が認知機能と記憶に効くかを調べた、系統的レビューのまとめ
- 発表年
- 2025年
- 研究機関
- オーストラリア・南オーストラリア大学
- 掲載誌
- British journal of sports medicine
- 研究の種類
- システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
- 対象
- 258,279人
- 結果の向き
- 良い方向
運動の系統的レビュー133本をまとめ、記憶力のテスト成績が小さく向上(SMD 0.26)。子どもで大きく出ました。

良くなります。運動を続けた人は、運動しない人より記憶テストの成績が小さく上がりました。
認知症のない大人の話です。上のまとめは子どもも含み、大人より子どもで向上が大きく出ています。若い大人では差が出なかった試験もあります。
決まった回数や時間は、まとめからは言えません。研究では、低〜中強度の運動や、1〜3か月続けた運動で効果が大きく出ていました [1]。散歩や自転車など、続けられる運動から始めましょう。
この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。
| 項目 | 点 | 配点 | 何を見るか |
|---|---|---|---|
| 研究デザイン | 40 | 40 | いちばん信頼できる研究の種類 |
| 研究の量 | 20 | 20 | 研究件数と参加人数 |
| 一致度 | 23.2 | 25 | 結果の向きがそろっているか |
| 新しさ | 10 | 10 | 最新の研究が何年以内か |
| 精度 | 0 | 5 | 信頼区間が「差なし」をまたがないか |
合計 93.2 点を、エビデンス強度 A の範囲(75〜100 点)に収めて、スコアは 93 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 2 本・RCT のメタ解析 5 本。
配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。
運動は、記憶をつかさどる脳の部分(海馬)を大きくしたり、脳の神経の栄養になるたんぱく質(BDNF)を増やしたりして、記憶力を高めるとされています。ウォーキングなどの有酸素運動、筋力トレーニング、強い運動と休みを交互に繰り返すHIITなど、種類はさまざまです。研究では、数週間から数か月続ける運動と、一度だけの運動を分けて調べるのが特徴です。注意点は、急に激しい運動を始めると体に負担がかかることです。
答えの中心は、オーストラリアの南オーストラリア大学などの研究チームが2025年に発表したアンブレラレビューです [1]。アンブレラレビューとは、複数の系統的レビュー(研究結果のまとめ)をさらに集めて見直す方法です。運動のランダム化比較試験(くじ引きで運動する人としない人に分ける試験)を集めた、系統的レビュー133本が対象でした。
| 研究の種類 | 運動のランダム化比較試験を集めた、系統的レビュー133本のまとめ |
|---|---|
| 対象 | 子どもから高齢者まで、病気のある人も含む(試験2724件・258279人) |
| 比べたもの | 運動をした場合 / しない場合 |
| 結果 | 記憶力のテスト成績が小さく向上(SMD 0.26) |
SMDは、異なる尺度の結果をそろえて比べる数値で、「何割か良くなる」という意味ではありません。
差の大きさは、同じ尺度で見ると、小テストなどで思い出す練習をした場合の成績の上がり方(Hedges g 0.499、中くらいの大きさ)より小さくなります [4]。
大きなまとめでは、低〜中強度の運動、1〜3か月の短めの運動、体を動かすゲームで効果が大きく出ました [1]。最適な時間と期間は決まっていません。
しくみは、研究ではまだ確かめられていません。45〜65歳の74人の試験では、運動による血液中のたんぱく質(S-Klotho)と活性型ビタミンDの変化が、記憶テストの変化と関連していました。研究チームは、これらが運動による記憶の向上に関わっている可能性があると述べています [5]。関連が見られた段階で、原因とは言えません。
単語を覚えたあとに10週間、自転車をこぐ運動を続けても、ストレッチと比べて覚えた量や4週間後の記憶に差がありませんでした [7]。
HIIT試験の対象は、運動習慣のない45〜65歳の74人です [5]。測ったのは記憶テストの成績で、日常の物忘れが減るかは、この研究からは言えません。急に激しい運動を始めると体に負担がかかります。持病がある人や、運動で体調に不安がある人は、医師に相談してから始めてください。
運動は、記憶力を大きく変える方法ではなく、小さく押し上げる習慣として読むのが正確です。
運動を続けると、記憶テストの成績は小さく上がります。
子どもで大きく、若い大人では差が出なかった試験もあり、年齢で効き方が違います。
まずは低〜中強度の運動を無理なく続け、覚える前や覚えたあとに体を動かすのも試してみましょう。
思い出す練習(小テストなど)は、実際の授業での研究222件・48478人のまとめで、読み直しなどより成績が中くらいの大きさで上がりました [[33683913]]。睡眠を3〜6.5時間に削ると、新しく覚える成績が小さく下がる傾向もあります [[39427809]]。勉強法は[暗記には復習とテストのどちらが効果的?](/evidence/memorization-methods)、睡眠は[睡眠の質を高める方法は?](/evidence/sleep-quality-methods)で解説しています。
高齢者のランダム化比較試験12件・1051人のまとめのうち、神経の病気のない高齢者では、記憶力全般の成績が運動しない場合より向上しました。著者は、より大きく追跡の長い試験が必要としています [[32329024]]。
一度の運動を、覚えたあとに行った場合も、記憶が良くなっていました(d = 0.33)。覚えている最中の運動では差がありませんでした [[42339428]]。
運動の系統的レビュー133本をまとめ、記憶力のテスト成績が小さく向上(SMD 0.26)。子どもで大きく出ました。
55歳以上の2750人(研究36件)で、有酸素運動により出来事の記憶が小さく向上(Hedges g 0.28)。
健康な人の試験で、続ける運動はワーキングメモリを小さく向上させ、一回だけの運動ではっきりした効果はありませんでした。
授業の研究222件・48478人のまとめで、小テストにより成績が中くらいの大きさで上がりました(Hedges g 0.499)。
運動習慣のない45〜65歳の74人で、12週間のHIITをした群は、聞いてすぐの記憶の成績が良くなりました。
健康な人1595人(論文21本)で、見た物の位置を覚える力が小さく向上。子どもと高齢者で確かめられました。
20〜40歳の52人で、10週間の自転車こぎをしても、ストレッチと比べて覚えた量や4週間後の記憶に差はありませんでした。
42の実験で、覚える前に一度運動すると記憶テストの成績が少し向上(d = 0.23)。覚えている最中の運動では差なし。
健康な高齢者で、軽い運動を一度したあとは、座って休んだときより、よく似たものを見分けて覚えている力のテスト成績が良かった。
383研究・18,347人のまとめで、一度の運動は頭の働きを少し向上。強さ・種類・時間で効果は変わりませんでした。
健康な高齢者554人(RCT8件)で、有酸素運動を続けても海馬の大きさに差はなく、体力は上がっていました。
高齢者120人のRCTで、有酸素運動をした人は海馬が2%大きくなり、空間の記憶も向上しました。
運動を続けた2,031人(RCT39件)で、運動しない人より血液中のBDNFが多くなりました。
神経の病気のない人で、持久系の運動を一度すると血液中のBDNFが増えました(効果量 0.30)。
運動習慣のない認知症ではない高齢者では、運動を続けても血液中のBDNFに差はありませんでした。
観察研究58件で、よく体を動かす人は認知症になる割合が低く、相対リスクは0.80でした。
運動を12か月以上続けた試験4件で、認知症になる人の割合にはっきりした差はありません(研究の質は低い)。
高齢者の試験12件・1051人のまとめのうち、神経の病気のない高齢者で、記憶力全般の成績が向上(SMD 1.24)。追跡の長い試験が必要です。
判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。