運動習慣があると風邪をひきにくい?

運動習慣があると風邪をひきにくい?
読了目安 5〜7分最終更新日 2026.11.01
答え効かない

かかったときの症状は軽くなります。かかる回数は減りません。

根拠

運動する人としない人を比べた試験のまとめ(コクランレビュー)で、運動を続けた人は風邪をひいたときの症状の重さのスコアが低くなりました(RCT2件・373人)[1]。一方、期間中に1回以上風邪にかかった人の割合に差はありませんでした(RCT5件・520人)[1]。根拠の確かさは低めです。回数を調べた試験は参加者が少なく、結果の幅が広いためです。

この答えの範囲

ふだん運動していない成人が、ウォーキングなど中くらいの強さの運動を続けた試験の話です。激しい運動や、一流の選手の話は別です。

じゃあ、どうする?

風邪予防の手段として運動を頼るより、かかったときに軽く済む備えとして続けるのが研究に合った使い方です。マラソンのようなレースのあとは症状が出やすい関連があるので、数週間は睡眠と休養を優先しましょう。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。低い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。9 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。おおむね一致
判定の内訳を見る(スコア 64 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量1220研究件数と参加人数
一致度2525結果の向きがそろっているか
新しさ610最新の研究が何年以内か
精度25信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 85 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、RCT のメタ解析 1 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「低い」で、これを強度の上限にしています。 この上限により、強度を A から C に下げました。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

運動と風邪の研究とは

運動と風邪の研究は、運動する人としない人を比べて、風邪にかかる回数や症状の重さを調べるものです。ウォーキングや自転車などの中くらいの強さの運動が、よく調べられています。研究には、運動を割り当てて比べる試験と、ふだんの運動量と風邪の関係を追う観察研究があります。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、ブラジルのマットグロッソドスル州立大学などの研究チームが2020年に発表したコクランレビューです [1]。コクランレビューとは、決めた手順で関連する試験を集め、結果をまとめる方法です。18〜85歳の成人を対象にした試験14件・1377人が集められ、多くはウォーキングや自転車などの運動を週3回以上、30〜45分行っていました。

研究の種類運動の有無を比べた試験のコクランレビュー
対象18〜85歳の成人(試験14件・1377人)
比べたもの中くらいの強さの運動を続ける人と、続けない人
結果風邪にかかる割合に差はなく、かかったときの症状の重さは運動する人で低い
まとめて分析した結果運動を続けても、期間中に1回以上風邪にかかった人の割合は、はっきり減りませんでした(比0.88、RCT5件・520人)[1]。

風邪にかかったときの症状の重さは、運動した人で低くなりました(RCT2件・373人)[1]。

回数について根拠の確かさは低めです。含まれた試験は参加者が少なく、結果の幅が広いためです。症状の重さは、中程度の確かさの結果です。期間中に症状があった日数は平均2.24日少なく、1回あたりの日数には差がありませんでした [1]。

何が違う? かかる回数と症状の重さ

運動で変わったのは「かかった回数」ではなく「かかったあとの重さ」でした。たとえば運動を週3回続けても、風邪をひく人の割合は運動しない人と同じ程度です。ただ、ひいたときのつらさは軽くなる方向でした。

よく言われていることは本当?

  • 適度な運動を続けると免疫が上がり、風邪をひきにくくなる回数については、試験では確認されていません。 運動する人としない人の比較で、1回以上かかった割合に差はありませんでした [1]。2018年にまとめ直した分析も、風邪を防げるかは分からないと結論しています [2]。
  • 運動していると風邪をひいても軽く済む・早く治る軽く済む点は本当です。 症状の重さのスコアが運動した人で低くなりました [1]。早く治るかどうかは、1回あたりの日数に差がなく、確かめられていません。
  • 激しすぎる運動は逆に風邪をひきやすくするマラソンでは、そのとおりの関連があります。 研究7件のメタ解析で、マラソンのあとは走る前より風邪の症状が出る割合が18%高くなっていました [3]。ただし対照グループのない前後比較で、因果は分かりません。
  • 運動でNK細胞などの免疫細胞の働きが高まる風邪のかかりやすさを直接調べた研究ではないため、この記事では評価していません。 風邪にかかる回数に差が出ていない点は、上の結果のとおりです。
  • 運動不足だと免疫が落ちて風邪をひきやすい試験では、運動しない人も運動する人も風邪にかかる割合は同じ程度でした [1]。 観察研究では結果が割れていて、次の節で触れます。

観察研究では結果が割れている

運動量の多い人ほど感染症が少ないという関連を示した研究があります。観察研究6件・557,487人のまとめでは、ふだんの運動量が多い人は、地域でかかる感染症のリスクが31%低い関連がありました。ただし風邪だけを見たものではありません [4]。スウェーデンの1509人を追った研究でも、活動量の多い人は風邪を自己申告するリスクが18%低い関連がありました [5]。

一方、スウェーデンの働く成人2,038人の研究では、運動量と風邪のかかりやすさに関連は見られませんでした [6]。フィンランドの喫煙者の男性14,401人の観察でも関連はありませんでした [7]。

こうした違いが出る理由として、運動する人は睡眠や食事など、ほかの生活習慣も整っていることが多い点があります。観察研究では、運動そのものの影響かどうかを分けられません。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

閉経後の女性90人の試験では、ウォーキングを12週間続けた人で風邪の回数が少なくなりました [8]。一方、ふだん運動しない413人の試験では、運動グループは120回、運動しないグループは134回で、大きな差はありませんでした [9]。

差が出なかった試験ふだん運動しない成人413人

運動グループの風邪は120回、運動しないグループは134回でした。

02注意点

研究で使われた運動は、ウォーキングや自転車などの中くらいの強さで、週3回以上、30〜45分が中心でした [1]。この結果が、激しい運動やスポーツ選手にそのまま当てはまるとは言えません。レース後は症状が出やすい関連があるため、体調がすぐれないときの無理な運動は避けてください。持病がある人や、熱・咳が続く人は、医師に相談してください。

風邪の症状があるときは、運動を控えて休む

発熱や強いだるさがあるときの運動は、研究では確かめられていません。

03まとめ

運動を続けると、風邪にかかる回数は変わらなくても、かかったときの症状は軽くなります。
風邪予防として運動だけに頼らず、手洗いや睡眠など、ほかの対策とあわせて考えましょう。
風邪を予防する別の方法は、乳酸菌で風邪をひきにくくなる?でも整理しています。

04よくある質問

Qどのくらいの運動が研究で使われていますか?

多くはウォーキングや自転車などの中くらいの強さの運動を、週3回以上、30〜45分行っていました [[32246780]]。それより激しい運動や短い運動については、このレビューでは確かめられていません。

Qマラソンを走ると風邪をひきやすくなりますか?

マラソンのあとは、走る前より風邪の症状が出る割合が18%高いという関連が報告されています [[39094181]]。対照グループのない前後比較なので、マラソンが原因とは言い切れません。5km〜ハーフマラソンの273人では、レースの翌週に感染症は増えませんでした [[2635263]]。

Q運動すると風邪が早く治りますか?

症状の重さは軽くなりましたが、1回あたりの日数には差がありませんでした [[32246780]]。期間中に症状があった日数は平均2.24日少なくなっています。

05参照した論文

判定に使った主な論文(9本)

[1]運動の有無で風邪などのかかりやすさ・重さ・期間を比べたコクランレビュー

発表年
2020年
研究機関
ブラジル・マットグロッソドスル州立大学
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
520人
結果の向き
差なし

運動する人としない人の比較で、1回以上かかった割合は5件・520人で比0.88。症状の重さは2件・373人で運動した人が低かった。

[2]運動は上気道感染の予防に有効かを調べたまとめ分析

発表年
2018年
研究機関
チリ・チリ・カトリック大学
掲載誌
Medwave
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究14件を統合
結果の向き
差なし

既存のレビューのデータをまとめ直した分析で、中くらいの強さの運動で風邪を防げるかははっきりしなかった。

[3]マラソン後の上気道感染のリスクを調べたメタ解析

発表年
2024年
研究機関
ブラジル・カンピーナス州立大学
掲載誌
Exercise immunology review
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究7件を統合
結果の向き
悪い方向

研究7件のメタ解析で、マラソンのあとは走る前より風邪の症状が出る割合が18%高かった。

[4]ふだんの運動量と免疫・感染症リスクの系統的レビュー

発表年
2021年
研究機関
イギリス・グラスゴー・カレドニアン大学
掲載誌
Sports medicine (Auckland, N.Z.)
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
557,487人
結果の向き
良い方向

観察研究6件・557,487人で、運動量が多い人は地域でかかる感染症のリスクが31%低かった。風邪に限らない。

[5]運動量・ストレスと自己申告の風邪を調べた観察研究

発表年
2011年
研究機関
スウェーデン・カロリンスカ研究所
掲載誌
Medicine and science in sports and exercise
研究の種類
コホート研究生活習慣などの違いで集団を分け、長い期間追いかけて比べる研究。
対象
1,509人
結果の向き
良い方向

スウェーデンの1509人で、活動量の多い人は風邪を自己申告するリスクが18%低かった。

[6]運動・睡眠と呼吸器感染症のスウェーデンの観察研究

発表年
2018年
研究機関
スウェーデン・カロリンスカ研究所
掲載誌
PloS one
研究の種類
コホート研究生活習慣などの違いで集団を分け、長い期間追いかけて比べる研究。
対象
2,038人
結果の向き
差なし

働く成人2,038人の観察で、運動量と風邪のかかりやすさに関連は見られなかった。

[7]ビタミンEなどを使った男性での運動量と風邪の研究

発表年
2003年
研究機関
フィンランド・ヘルシンキ大学
掲載誌
Medicine and science in sports and exercise
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
14,401人
結果の向き
差なし

フィンランドの喫煙者の男性14,401人の観察で、仕事や余暇の運動量と風邪のリスクに関連はなかった。

[8]閉経後の女性の運動と風邪の回数を調べた試験

発表年
2005年
研究機関
トルコ・Ciloğlu Fほかの研究チーム
掲載誌
Kulak burun bogaz ihtisas dergisi : KBB = Journal of ear, nose, and throat
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
90人
結果の向き
良い方向

閉経後の女性90人の試験で、運動したグループは風邪の回数が少なかった。

[9]瞑想や運動で呼吸器感染症を防げるかを調べた試験

発表年
2018年
研究機関
アメリカ・ウィスコンシン大学マディソン校
掲載誌
PloS one
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
413人
結果の向き
差なし

ふだん運動しない413人の試験で、運動グループは120回、運動しないグループは134回風邪にかかった。

ほかに参考にした論文(8本)

判定「効かない」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。