夫婦げんかのあと仲直りする姿を見せると、子どもへの影響は和らぐ?

夫婦げんかのあと仲直りする姿を見せると、子どもへの影響は和らぐ?
読了目安 5〜7分最終更新日 2026.11.06
答え良い関連がある

仲直りで終わるけんかを見た子どもは、動揺が小さいことと関連しています。測ったのは、その場の気持ちです。

根拠

子どもに大人の言い争いを見せた実験 4 件が、どれも同じ向きでした。仲直りで終わる場面のほうが、解決しない場面より怖さが小さく、うれしい気持ちと結びついていました [1]。4〜5 歳の幼児でも、前に仲直りを見ていた子は、次の言い争いを見たときの動揺が小さい結果でした [2]。根拠の確かさは低めです。実験の数が少なく、ランダム化の記載が無いためです。

この答えの範囲

幼児〜小学生が、映像や実演で大人の言い争いを見たときの、その場の気持ちの話です。長い目で見た子どもの成長を測った実験ではありません。

じゃあ、どうする?

けんかが起きたら、前向きな気持ちで終える姿を見せましょう。前向きな気持ちで終えることも、争いをやめて終えることも、それぞれ子どもの受け止め方を良くしました [3]。けんかのしかた自体は、短いプログラムで建設的に変えられます [4]。暴力や長引く対立があるときは、専門家に相談を。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。低い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。12 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。おおむね一致
判定の内訳を見る(スコア 48 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン1040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量10.520研究件数と参加人数
一致度2525結果の向きがそろっているか
新しさ310最新の研究が何年以内か
精度05信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 48.5 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 48 点です。 判定に使った研究は、その他のヒトの研究 4 本。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

仲直りを見せる、とは

夫婦のけんかの「終わり方」を、子どもに見せることです。話し合って歩み寄る、謝る、気持ちを切り替えて笑い合う、といった場面が当てはまります。研究では、けんかの頻度・強さ・内容と並んで、「どう終わったか」が子どもへの影響を分ける要素の一つとして扱われています [5]。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、アメリカのノートルダム大学などの研究チームが2011年に発表した実験です [1]。子どもに夫婦げんかの場面を見せて、気持ちとストレスホルモン (コルチゾール) を調べました。

研究の種類子どもに夫婦げんかの場面を見せた実験
対象平均8.02歳の子ども207人
比べたもの解決する・解決しない・エスカレートする・子育てをめぐるけんかの場面
結果怖さは「エスカレートする」「解決しない」けんかと、うれしい気持ちは「解決した」けんかと結びついていた
実験の結果仲直りで終わる場面は、うれしい気持ちと結びついていました。

解決しない場面とエスカレートする場面では、怖さが強く出ました [1]。

同じ向きの結果は、ほかの実験にもあります。アメリカのオーバーン大学などの研究では、4〜5 歳の幼児に、目の前で大人が演じる言い争いを見せました。前に仲直りで終わる言い争いを見ていた子は、次の言い争いを見たときの動揺が小さくなりました [2]。アメリカのウェストバージニア大学などの研究では、前向きな気持ちで終わる場面や、争いをやめて終わる場面のほうが、子どもの受け止め方が良くなりました [3]。

実験は全部で 4 件で、ランダム化の記載はありません。測っているのは、見た直後や次の言い争いでの気持ちで、数年後の心の健康ではありません。ここが、いちばん大事な読み方の注意です。

子どもによって、反応の強さは違う

アメリカのロチェスター大学などの研究では、6〜11 歳の子どもに大人の怒りのやりとりを見せました。虐待を受けた44人は、受けていない44人にくらべて、怒りが解決したかどうかに特に敏感でした [6]。

虐待を受けた子どもを含む実験6〜11 歳の子ども (虐待を受けた44人と受けていない44人)

怒りが解決したかどうかへの反応が、虐待を受けた子どものほうで強く出ました。

長い目で見た影響は?

フロリダ州立大学などの研究チームが2026年に発表した系統的レビューは、研究23件をまとめました [7]。系統的レビューとは、決めた手順で関連する研究を集め、結果を整理する方法です。建設的な夫婦げんか (落ち着いた話し合い・歩み寄り・解決) が多い家庭ほど、子どもの不安・落ち込みや問題行動が少なく、心の安定や人との問題を解決する力が高い、という関連が見られました。観察研究が中心なので、原因と結果までは言えません。根拠の確かさは低めです。研究の作りがさまざまで、多くの関連がほかの要因の影響を受けていたためです。

一方、研究169件のメタ解析では、敵意のある・避ける・建設的でない夫婦げんかが、子どもの心の問題や、けんかへの反応のリスクと関連していました [8]。

けんかのしかたは、学んで変えられる

夫婦の対立の扱い方を学ぶ短いプログラムは、ランダム化比較試験で確かめられています。アメリカのノートルダム大学などの研究チームが2016年に発表した試験では、思春期の子どもがいる225家庭を、親と子で参加・親だけ参加・自習・何もしない、の組に分けました。プログラムで建設的なけんかが増え (d = 0.89)、破壊的なけんかが減りました (d = -0.30) [4]。4〜8歳の子どもがいる夫婦を対象にした試験でも、プログラムを受けた組は、どの時点でも建設的なけんかが多く、破壊的なけんかが少なくなっていました [9]。同じ225家庭の追跡では、夫婦げんかへの子どもの感情的な動揺も、直後から長期にわたって減りました [10]。根拠の確かさは中程度です。

よく言われていることは本当?

  • 子どもの前での夫婦げんかは、子どもに悪い影響があるけんかの種類しだいです。 敵意のある・避ける・建設的でないけんかは、子どもの心の問題と関連しています [8]。「自己主張が苦手になる」を直接調べた研究は、見つかっていません。
  • けんかをしても、仲直りする姿を見せれば子どもの不安は和らぐ実験では、そのとおりの結果でした。 仲直りで終わる場面のほうが動揺は小さく、実験 4 件はすべて同じ向きです [1] [2]。ただし測ったのは、その場の気持ちです。
  • 子どもに見せても問題のないけんかがあるあると考えられます。 落ち着いた話し合いや歩み寄りが多い家庭ほど、子どもの不安・落ち込みが少ないという関連があります [7]。
  • 仲直りを見せると、子どもは問題の解決のしかたを学ぶ関連は報告されています。 建設的なけんかは、人との問題を解決する力の高さと関連し [7]、幼児238人の追跡では、翌年の問題解決の力の伸びを予測しました [11]。学んだ結果とまでは言えません。
  • 激しい口論や暴力を子どもの前で見せるのは、心理的な虐待にあたるこれは制度上の定義の話で、研究で効果を確かめる話ではありません。 暴力にさらされた幼い子どもの家庭では、親が前向きにけんかを解決していると答えた家庭で、社会性・情緒の力への悪い影響が和らいでいました [12]。
  • 夫婦げんかのしかたは、学んで変えられる変えられます。 上の試験で、建設的なけんかが増えました [4]。

02注意点

実験の対象は、映像や実演で大人の言い争いを見た子どもです。ふだんの家庭で、毎日のけんかを見て育つ子どもの結果とは別の話です。プログラムの試験では、思春期の子どもがいる225家庭が、終了時と6か月後に調べられました [4]。暴力がある、けんかが長く続く、子どもの様子が気になる、というときは、小児科医・児童相談所・心理の専門家に相談してください。

終わり方で、子どもの受け止め方は変わる

前向きな気持ちで終わる場面も、争いをやめて終わる場面も、子どもの受け止め方が良くなりました [3]。

03まとめ

仲直りで終わるけんかは、子どもの動揺が小さいことと関連しています。
これは、見た直後の気持ちを測った実験の結果で、根拠の確かさは低めです。
けんかのあとは、前向きな気持ちで、争いを収めて終える姿を見せましょう。

04よくある質問

Q仲直りを見せれば、けんかをしても大丈夫ですか?

敵意のあるけんかや、解決しないけんかは、子どもの心の問題と関連しています [[32437177]]。仲直りの姿は、その場の動揺を小さくする結果でしたが [[21397249]]、けんかを重ねてよいという意味ではありません。

Q赤ちゃんや幼児にも仲直りを見せる意味はありますか?

4〜5 歳の幼児では、前に仲直りを見ていた子の動揺が、次の言い争いで小さくなりました [[8956090]]。それより小さい子を対象にした実験は、今回の抽出にはありません。

Q仲直りの姿は、どう見せればよいですか?

前向きな気持ちで終えることです。前向きな気持ちで終えることも、争いをやめて終えることも、それぞれ子どもの受け止め方を良くしました [[W2126532166]]。

Qけんかのしかたを変えたいときは?

夫婦の対立の扱い方を学ぶ短いプログラムで、建設的なけんかが増えた試験があります [[26678399]]。地域の相談窓口や心理の専門家に聞いてみてください。

05参照した論文

判定に使った主な論文(13本)

[1]夫婦げんかを見た子どもの気持ちと対処のしかた

発表年
2011年
研究機関
アメリカ・ノートルダム大学
掲載誌
Journal of experimental child psychology
研究の種類
その他の研究上のどれにも当てはまらない研究。
対象
207人
結果の向き
良い方向

平均8.02歳の子ども207人に夫婦げんかの場面を見せた。うれしい気持ちは解決したけんかと結びついていた。

[2]幼児が見た、解決した言い争いと解決しない言い争い

発表年
1996年
研究機関
アメリカ・オーバーン大学
掲載誌
Journal of abnormal child psychology
研究の種類
その他の研究上のどれにも当てはまらない研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

前に仲直りで終わる言い争いを見ていた幼児は、次の言い争いでの動揺が小さかった。

[3]食い違う終わり方の言い争いと子どもの受け止め方

発表年
1996年
研究機関
アメリカ・ウェストバージニア大学
掲載誌
Child Development
研究の種類
その他の研究上のどれにも当てはまらない研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

前向きな気持ちで終わる場面や争いをやめて終わる場面のほうが、子どもの受け止め方が良くなった。

[4]家族の対立への短い心理教育プログラムの効果

発表年
2016年
研究機関
アメリカ・ノートルダム大学
掲載誌
Journal of abnormal child psychology
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
225人
結果の向き
良い方向

225家庭の試験で、建設的なけんかが増え (d = 0.89)、破壊的なけんかが減った (d = -0.30)。

[5]夫婦げんかが子どもの適応に与える影響の総説

発表年
2001年
研究機関
アメリカ・パシフィック心理学大学院
掲載誌
Clinical child and family psychology review
研究の種類
その他の研究上のどれにも当てはまらない研究。
対象
—
結果の向き
結果が割れている

夫婦げんかを頻度・強さ・内容・解決のしかたなどの側面で分けて考える必要があるとまとめた総説。

[6]虐待を受けた子どもと受けていない子どもの、大人の怒りへの反応

発表年
1994年
研究機関
アメリカ・ロチェスター大学
掲載誌
Child development
研究の種類
その他の研究上のどれにも当てはまらない研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

6〜11歳の子ども (虐待を受けた44人と受けていない44人) に大人の怒りのやりとりを見せた。

[7]建設的な夫婦げんかと子どもの状態の系統的レビュー

発表年
2026年
研究機関
アメリカ・フロリダ州立大学
掲載誌
Journal of marital and family therapy
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
研究23件を統合
結果の向き
良い方向

研究23件のまとめ。建設的な夫婦げんかは、子どもの問題が少ないことと関連していた。

[8]夫婦関係と子どもの適応のメタ解析

発表年
2020年
研究機関
オランダ・エラスムス大学ロッテルダム
掲載誌
Psychological bulletin
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
悪い方向

研究169件のメタ解析。建設的でない夫婦げんかは、子どもの心の問題と関連していた。

[9]地域の家庭向けの短い予防プログラムの評価

発表年
2008年
研究機関
アメリカ・ノートルダム大学
掲載誌
Journal of family psychology : JFP : journal of the Division of Family Psychology of the American Psychological Association (Division 43)
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
良い方向

4〜8歳の子どもがいる夫婦で、プログラムを受けた組は建設的なけんかが多かった。

[10]予防プログラムが思春期の感情的な不安定さに与える長期の影響

発表年
2024年
研究機関
アメリカ・ノートルダム大学
掲載誌
Family process
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
良い方向

プログラムは夫婦げんかへの子どもの感情的な動揺を、直後から長期にわたって減らした。

[11]建設的な夫婦げんかを見た幼児の追跡研究

発表年
2025年
研究機関
アメリカ・ロチェスター大学
掲載誌
Developmental psychology
研究の種類
コホート研究生活習慣などの違いで集団を分け、長い期間追いかけて比べる研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

幼児238人の追跡で、建設的な夫婦げんかは翌年の問題解決の力の伸びを予測した。

[12]親から子への攻撃・夫婦間の攻撃・けんかの解決と幼児の社会性

発表年
2022年
研究機関
アメリカ・ペンシルベニア州立大学
掲載誌
Family process
研究の種類
コホート研究生活習慣などの違いで集団を分け、長い期間追いかけて比べる研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

親が前向きに解決していると、子どもの社会性・情緒の力への悪い影響が和らいでいた。

Children's responses to different forms of expression of anger between adults.

発表年
1989年
研究機関
Cummings EMほかの研究チーム
掲載誌
Child development
研究の種類
その他の研究上のどれにも当てはまらない研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

大人どうしの怒りのやりとりの映像を見た子どもは、解決しないまま終わる怒りを、解決した怒りよりずっと悪い出来事と受け止め、怒りや苦痛を強く感じた

ほかに参考にした論文(8本)

判定「良い関連がある」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。