[1]母乳育児と知能の関係を調べた観察研究のメタ解析
- 発表年
- 2015年
- 研究機関
- ブラジル・ペロタス連邦大学
- 掲載誌
- Acta paediatrica (Oslo, Norway : 1992)
- 研究の種類
- システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
- 対象
- 研究17件を統合
- 結果の向き
- 良い方向
知能検査を調べた17件で、母乳で育った人はIQが平均3.44点高く、母親のIQを考慮すると2.62点に縮みました。

母乳で育った子は、学業や教育年数が高い傾向と関連しています。IQの差は、家庭の条件をそろえると小さくなります。
正期産で生まれた健康な子で確かめた結果です。早産で生まれた子の研究と、母乳の成分の研究は、本文にまとめています。
知能のために母乳か粉ミルクかを選ぶ必要はありません。母乳には感染症を減らすなど、別の利点があります [6]。母乳が出ない、続けられない事情があっても、粉ミルクで育った子の頭の働きが劣るとは研究で示されていません。不安は小児科や助産師に相談を。
この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。
| 項目 | 点 | 配点 | 何を見るか |
|---|---|---|---|
| 研究デザイン | 40 | 40 | いちばん信頼できる研究の種類 |
| 研究の量 | 20 | 20 | 研究件数と参加人数 |
| 一致度 | 11.6 | 25 | 結果の向きがそろっているか |
| 新しさ | 10 | 10 | 最新の研究が何年以内か |
| 精度 | 2 | 5 | 信頼区間が「差なし」をまたがないか |
合計 83.6 点を、エビデンス強度 D の範囲(5〜39 点)に収めて、スコアは 39 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 2 本・その他のヒトの研究 1 本・RCT のメタ解析 1 本・観察研究 10 本。
配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。
母乳育児は、赤ちゃんに母乳を飲ませて育てることです。感染症の予防などの利点が知られていて [6]、頭の働きや学業にも良いと言われてきました。母乳に含まれる脂肪酸のDHAが脳の発達を助ける、という説明もよく見ます。注意点は、母乳で育てる家庭と粉ミルクで育てる家庭では、母親の学歴や家庭の経済状況が違いやすく、単純には比べられないことです。
答えの中心は、ブラジルのペロタス連邦大学などの研究チームが2015年に発表したメタ解析です [1]。メタ解析とは、似た研究の結果を集めて数字を合わせる方法です。知能検査を調べた17件の観察研究がまとめられました。
| 研究の種類 | 知能検査を調べた観察研究のメタ解析 |
|---|---|
| 対象 | 母乳で育った人とそうでない人(17件) |
| 比べたもの | IQの点数 |
| 結果 | 母乳で育った人は平均3.44点高い。母親のIQを考慮した研究に限ると2.62点に縮んだ |
母親のIQを考慮した研究に限ると、差は2.62点に縮みました [1]。
家庭の条件をそろえるほど、差は小さくなります。米国の子ども5,475人を調べた研究では、調整前は約4点あった差が、母親のIQなどを考慮すると0.52点になり、はっきりした差ではなくなりました [2]。84件の研究を調べた系統的レビューも、報告されている差の多くは母親のIQや家庭の経済状況によるものだと結論しています [7]。
結果は割れています。
差が残った研究:
差が消えた研究:
くじで分ける試験は、家庭の条件の違いを除けます。ベラルーシの31の産科病院を、母乳育児の支援をする群と通常のケアの群に分けた試験では、6.5歳の言語性IQだけが7.5点高く、全体のIQ(5.9点)の差ははっきりしませんでした [3]。16歳で調べ直しても、全体の認知機能に差はなく、言語の得点だけがわずかに高い結果でした [11]。
支援群と比べた群の差はありませんでした [12]。ほとんどの子が母乳を飲んでいたため、差が薄まった可能性があると著者は述べています。
学業や教育年数は、母乳を長く飲んだ人ほど高い傾向と関連しています。
一方、ウガンダとブルキナファソの試験では算数と読みのテストに差がありませんでした [12]。この項目の研究も大半は観察研究で、家庭の条件を完全には除けていません。IQと同じように、母乳そのものの影響かどうかは言い切れません。
ベラルーシの試験では、6.5歳の問題行動に母親の評価でも先生の評価でも差がありませんでした [5]。観察研究10件・69,621人のメタ解析では、母乳で育った子の問題行動のオッズ比は0.66と低めでしたが、追跡研究だけに限ると関連ははっきりしませんでした [14]。日本の5歳の子ども1,198人でも関連は見られていません [15]。
早産で生まれた赤ちゃんは別の話です。早産児では、母乳を飲んだ群のほうが長期の認知の点数が高く、神経発達の障害も少ない結果でした [17]。ここまでの結果は、正期産の健康な子にあてはまります。母乳が出ない、続けるのがつらいなどの事情がある人は、小児科の医師や助産師に相談してください。母乳の赤ちゃんに必要な栄養は、母乳の赤ちゃんにビタミンDのサプリは必要? で扱っています。
母乳の期間が長いほど良い、という単純な話ではなく、粉ミルクの子を心配する必要もありません。
母乳で育った子は、学業や教育年数が高い傾向と関連しています。
IQの差は、母親のIQなど家庭の条件をそろえるほど小さくなり、問題行動に差は見られません。
頭の働きのために母乳か粉ミルクかを選ぶ必要はなく、ご家庭に合う方法で続けましょう。
研究では、そう示されていません。家庭の条件をそろえると、IQの差は小さくなるか、はっきりしなくなります [[17020911]]。
ブラジルの追跡では12か月以上の人でIQや教育年数が高い結果でした [[25794674]]。ただし、ベラルーシの試験で母乳だけの期間が3か月の子と6か月の子を比べても、6.5歳のIQに差はありませんでした [[19710187]]。
母乳の成分だけを比べたヒトの研究は見つかっておらず、研究では確かめられていません。
知能検査を調べた17件で、母乳で育った人はIQが平均3.44点高く、母親のIQを考慮すると2.62点に縮みました。
米国の子ども5,475人で、母親のIQなどを考慮すると差は0.52点で、はっきりしなくなりました。
言語性IQが7.5点高かった一方、全体のIQ(5.9点)の差ははっきりしませんでした。
3,493人を30歳まで追うと、12か月以上の人は教育年数が0.91年長く、月収も高い結果でした。
母親の評価でも先生の評価でも、問題行動に差はありませんでした。
感染症の予防などとともに、知能の上昇が挙げられています。
84件の研究のうち、調整すると差が消えたものが18件、小さくなったものが17件でした。
きょうだい2,734組で、健康面の差はほぼ消えましたが、認知能力との関連だけ残りました。
約8000家庭で、条件をそろえると5歳の語彙・認知能力に差はありませんでした。
双子11,582人で、IQの伸びと母乳との関連はありませんでした。
13,557人で、全体の認知機能に差はなく、言語の得点だけがわずかに高い結果でした。
ウガンダとブルキナファソで、認知能力や算数と読みのテストに差はありませんでした。
母乳を6か月以上飲んだ子は、高い成績を取る見込みが1.72倍でした。
10件・69,621人で、問題行動のオッズ比は0.66でしたが、追跡研究だけでははっきりしませんでした。
日本の5歳の子ども1,198人で、母乳の期間と情緒・行為・多動・友だち関係の問題に関連はありませんでした。
4件・661人で、18か月の発達の点数に差はありませんでした。
早産の赤ちゃんでは、母乳を飲んだ群のほうが長期の認知の点数が高い結果でした。
15件・12,316人をまとめると、母乳で育った子は知能検査の点数が、一度も母乳を飲まなかった子の1.04倍だった。6か月を超えて続けた子では1.06倍
米国の医療研究品質庁 (AHRQ) の先進国の研究のまとめでは、正期産の子どもで母乳と認知能力 (知能) の関連は見られなかった
イスラエルの大規模な調査で、きょうだい同士で比べても、6か月以上母乳を飲んだ子は、言葉・社会性・運動の発達の節目の遅れが少なかった (オッズ比0.91)
米国の4〜14歳で、ふつうに比べると母乳の子は11項目中10項目で良かったが、きょうだい同士で比べると1項目を除き差が大きく縮み、はっきりした差ではなくなった
米国の子ども10,700人で、条件をそろえて比べると、4歳の読みと認知に小さな差が見られた程度で、母乳の期間や母乳だけかどうかの効果はほとんどなかった
この記事のエビデンス強度は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。