手首のツボ(内関)で吐き気はおさまる?

手首のツボ(内関)で吐き気はおさまる?
読了目安 5〜7分最終更新日 2026.11.06
答え効く

手術後の吐き気の予防に、内関の刺激が効きます。

根拠

手術を受ける人の比較試験をまとめたコクランレビュー(40件・4742人)で、内関を刺激した人は、偽の刺激をした人より手術後に吐き気が起こる割合が低くなりました(リスク比0.68)[1]。嘔吐の割合も低く(リスク比0.60)、更新版でも針を使わない刺激でリスク比0.67でした [2]。根拠の確かさは低めです。試験ごとの結果のばらつきが大きく、59本のうち25本は研究の作りに弱い点があるためです [1]。

この答えの範囲

手術を受ける人の、吐き気を起こりにくくする予防の話です。つわりは効きますが確かさは低めで、結果もそろっていません。

じゃあ、どうする?

手術後の吐き気が心配なら、リストバンドなど針を使わない刺激は、試しやすい補助の方法です。吐き止めの薬と比べた解析では差がなく、薬より優れているとは言えません [1]。手術を受けるときは、使ってよいか事前に医師か看護師に確認を。強い吐き気が続くときは、医療機関に相談を。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。低い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。13 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。おおむね一致
判定の内訳を見る(スコア 64 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量19.220研究件数と参加人数
一致度2525結果の向きがそろっているか
新しさ310最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 92.2 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、RCT のメタ解析 1 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「低い」で、これを強度の上限にしています。 この上限により、強度を A から C に下げました。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

内関とは

内関(ないかん。英語名はPC6またはP6)は、手のひら側の手首の中央、しわから少しひじ寄りにあるツボです。吐き気や胃の不快感を和らげるとされ、指で押す指圧のほか、手首に巻くバンド、鍼、電気刺激など、刺激の方法がいくつかあります。医薬品ではなく、体の表面から刺激する方法なのが特徴です。注意点は、強い吐き気や嘔吐が続くときは、ツボ押しで様子を見ずに医療機関へ相談することです。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、香港中文大学などの研究チームが2015年に発表したコクランレビューです [1]。コクランレビューとは、世界中のランダム化比較試験を集めて結果をまとめる方法です。調べたのは、手術を受ける人の吐き気を、内関の刺激で「予防」できるかです。内関を刺激した人と偽の刺激をした人を比べています。刺激には指圧のほか、鍼や電気刺激も含まれます。

研究の種類コクランレビュー(ランダム化比較試験のまとめ)吐き気の解析は40件・4742人
対象手術を受ける人(吐き気を予防できるか)
比べたもの内関の刺激 / 偽の刺激
結果手術後の吐き気が起こる割合が低い(リスク比0.68)
まとめて分析した結果手術後に吐き気が起こる割合が、偽の刺激より低くなりました。

95%信頼区間は0.60から0.77で、根拠の質は低いとされています [1]。

リスク比0.68は、偽の刺激で吐き気が起きた割合を1としたとき、内関を刺激した人では0.68だったという意味です。嘔吐が起こる割合もリスク比0.60(45件・5147人)、追加の吐き止めが必要になる割合も0.64と低くなりました [1]。吐き止めの薬と比べた14件・1332人の解析では、吐き気の起こる割合に差はなく(リスク比0.91)、根拠の質は中程度とされています [1]。

2025年の更新版(63件・7534人)は、方法ごとに偽の刺激と比べました [2]。吐き気が起こる割合のリスク比は次のとおりです。

  • リストバンドなど針を使わない刺激: 0.67
  • 鍼など針を使う刺激: 0.49
  • 吐き止めの薬: 0.73

確かさはどれも低いか非常に低いとされています。針を使わない刺激は、薬と近い値でした [2]。

よく言われていることは本当?

検索上位の記事やAIの要約で言われている6つの効き目を、研究で確かめました。

  • 吐き気・ムカムカが和らぐ手術後の吐き気には効きます [1]。 根拠の確かさは低めです。試験ごとの結果のばらつきが大きく、研究の作りに弱い点があるためです。手術を受けた人の結果なので、ふだんのムカムカにそのまま当てはまるとは言えません。
  • 乗り物酔いを防ぐ結果が割れています。 小さな実験が中心で、効いたものも、偽の指圧と差がないものもありました。
  • つわりを和らげる効きますが、根拠の確かさは低めです。 結果のばらつきが大きいためです。プラセボと比べた試験を集めた解析では、内関は効果が上位の方法の一つでした [3]。一方、偽のツボ押しと差がない解析もあります [4]。
  • 胃もたれ・食べ過ぎに効く効果は確認されていません。 内関のリストバンドを偽物と比べた研究は、胃もたれが続く子ども33人の1本だけで、症状の改善は、内関のリストバンドで40%、偽のリストバンドで35%と近い値でした [5]。根拠の確かさは低めです。研究が小さな1本だけのためです。大人の研究は見つかっていません。
  • 二日酔いの吐き気に効く内関で二日酔いを調べた人の研究は見つかっておらず、研究が足りません。
  • 自律神経を整え、不安やイライラを和らげる内関だけを押して調べた研究は見つかっておらず、研究が足りません。 不安を調べた試験は、ほかのツボと組み合わせていて、内関の効果を切り分けられません。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

つわりでは、偽の治療(プラセボ)と比べた試験だけを集めた2026年のメタ解析(複数の試験をまとめた研究。24件・3017人)で、内関のツボ押しは効果が上位の方法の一つでした。ただし不確かさは大きいとされています [3]。2023年の別のメタ解析(つわりの補完療法33件をまとめたもの)では、偽のツボ押しと差がありませんでした [4]。2つは測ったものが違い、前者は症状を減らす効果、後者は「効果があった」とされた人の割合です。

乗り物酔いは、回転する筒や椅子、運転シミュレーターで酔いを起こす小さな実験が中心です(5本・合計201人)。結果は割れています。

  • 1995年・64人(回転する筒): 内関を押した人は、ツボではない場所を押した人や偽の指圧の人より吐き気が少なかった [6]
  • 2001年・25人(回転する筒): リストバンドで症状が減ったが、ツボではない腕につけた日も同じように減った [7]
  • 2005年・60人(回転する椅子): 内関の指圧は何もしない人より、中くらいの吐き気が出るまでの時間が長かったが、偽の指圧との差はなかった [8]
  • 1991年・36人(二重盲検。本物か偽物かを本人にも試験者にも伏せた実験): 偽の指圧と差がなかった [9]
  • 2011年・16人(運転シミュレーター): 指圧のビーズは偽の器具と差がなかった [10]

偽の刺激と比べて差が出たのは、5本のうち1995年の1本だけです。

差がなかった試験妊娠6〜14週でつわりのある74人

内関のリストバンドを1週間つけても、何もしなかった人と点数に有意な差はありませんでした [11]。

02注意点

手術後でも、いつも差が出るわけではありません。2024年の帝王切開の試験では、吐き気止めの薬と併用した内関の指圧は、偽の指圧と比べて吐き気を減らしませんでした [12]。副作用は、皮膚の刺激・水ぶくれ・赤み・痛みなどの軽いもので、自然におさまったと14件の試験が報告しています [1]。乳房の手術を受けた女性の14件のまとめでは、リストバンドの指圧は副反応が出やすかったと報告されています [13]。

強い吐き気や嘔吐が続くとき、激しい腹痛・胸の痛み・頭痛を伴うとき、つわりで水分がとれないときは、ツボ押しで様子を見ず、医療機関に相談してください。持病や服薬がある人、妊娠中の人は、医師・薬剤師に確認してから試すと安心です。

研究の対象と、自分の場面を分けて考える

手術後の結果を、食べ過ぎや二日酔いの吐き気にそのまま当てはめないでください。

03まとめ

手術後の吐き気の予防には、内関の刺激で吐き気が起こる割合が下がります。
つわりにも効きますが根拠の確かさは低めで、乗り物酔いは結果が割れ、胃もたれは効果が確認されず、二日酔い・不安は研究が足りません。
試すなら補助として。つらい吐き気が続くときは、医療機関に相談しましょう。

04よくある質問

Q食べ過ぎや二日酔いの吐き気にも効きますか?

研究では確かめられていません。見つかった研究は、手術後・つわり・実験で起こした乗り物酔いなどで、二日酔いを調べた研究は見つかっていません。

Qつわりに使ってもよいですか?

効きますが、根拠の確かさは低めです。結果がそろっておらず、偽のツボ押しと差がなかった解析もあります。妊娠中は、試す前に医師か助産師に相談してください。

Q吐き止めの薬の代わりになりますか?

手術後の研究で薬と比べた14件の解析では、吐き気の起こる割合に差がありませんでした。ただし、薬より優れているという意味ではありません。薬を使うかどうかは、医師に相談してください。

05参照した論文

判定に使った主な論文(13本)

[1]手術後の吐き気の予防に手首のツボを刺激する効果

発表年
2015年
研究機関
香港・香港中文大学
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
4,742人
結果の向き
良い方向

手術を受ける人で、内関の刺激は偽の刺激より吐き気が起こる割合が低かった(40件・4742人)。

[2]手術後の吐き気予防に内関を刺激する方法のネットワークメタ解析

発表年
2025年
研究機関
香港・香港中文大学
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
7,534人
結果の向き
良い方向

更新版(63件・7534人)でも、針を使わない刺激でリスク比0.67だった。

[3]つわりの薬やツボ押しなどを比べたネットワークメタ解析

発表年
2026年
研究機関
ハンガリー・センメルワイス大学
掲載誌
Nutrients
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
3,017人
結果の向き
良い方向

プラセボと比べた24件・3017人の解析で、内関のツボ押しは上位の方法の一つだったが、不確かさは大きかった。

[4]妊娠中の吐き気と嘔吐に対する補完代替療法の有効性と安全性のメタ解析

発表年
2023年
研究機関
中国・成都中西医結合医院
掲載誌
Frontiers in public health
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究33件を統合
結果の向き
差なし

ツボ押しを偽のツボ押しと比べると、効果があったとされる割合に差がなかった。

[5]胃もたれが続く子どもへの内関のリストバンドの試験

発表年
2026年
研究機関
スイス・バーゼル大学小児病院
掲載誌
Klinische Padiatrie
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
33人
結果の向き
差なし

33人の試験で、症状の改善は内関のリストバンドで40%、偽のリストバンドで35%と近かった。

[6]指圧で乗り物酔いの吐き気を減らせるかを調べた実験

発表年
1995年
研究機関
アメリカ・フンボルト州立大学
掲載誌
Aviation, space, and environmental medicine
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
64人
結果の向き
良い方向

64人の実験で、内関を押した人は偽の指圧の人より吐き気が少なかった。

[7]指圧リストバンドが乗り物酔いに与える影響

発表年
2001年
研究機関
アメリカ・ペンシルベニア州立大学
掲載誌
Alternative therapies in health and medicine
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
25人
結果の向き
良い方向

25人の実験で、ツボではない腕につけた日も同じように症状が少なかった。

[8]乗り物酔いの経験がある女性に対する内関の指圧の実験

発表年
2005年
研究機関
スウェーデン・リンショーピング大学病院
掲載誌
Canadian journal of anaesthesia = Journal canadien d'anesthesie
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
60人
結果の向き
結果が割れている

女性60人の実験で、内関の指圧は何もしない人より中くらいの吐き気が出るまでが長かったが、偽の指圧との差はなかった。

[9]指圧が乗り物酔いを防ぐかを調べた二重盲検の実験

発表年
1991年
研究機関
イギリス・サウサンプトン大学
掲載誌
Aviation, space, and environmental medicine
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
36人
結果の向き
差なし

36人の二重盲検の実験で、指圧は偽の指圧と比べて酔いを防がなかった。

[10]運転シミュレーターでの酔いに対する指圧と電気刺激の比較

発表年
2011年
研究機関
アメリカ・バージニア大学
掲載誌
Military medicine
研究の種類
ランダム化比較試験(クロスオーバー)参加者が順番を変えながら複数の条件を体験し、結果を比べる試験。
対象
16人
結果の向き
差なし

16人の実験で、指圧のビーズは偽の器具と体の不快感に差がなかった。

[11]つわりに対する内関のリストバンドの効果

発表年
2023年
研究機関
トルコ・ドゥズジェ県保健局
掲載誌
Journal of acupuncture and meridian studies
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
74人
結果の向き
差なし

つわりのある74人で、リストバンドをつけても何もしない人と点数に差がなかった。

[12]帝王切開中の吐き気に対する内関の指圧と偽の指圧の比較

発表年
2024年
研究機関
アメリカ・バンダービルト大学医療センター
掲載誌
International journal of obstetric anesthesia
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
差なし

吐き気止めの薬と併用した内関の指圧は、偽の指圧と比べて吐き気を減らさなかった。

[13]乳房の手術後の吐き気に針を使わないツボ刺激を行うメタ解析

発表年
2019年
研究機関
Sun Rほかの研究チーム
掲載誌
Medicine
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
1,009人
結果の向き
良い方向

14件・1009人のまとめで、吐き気は減ったが、リストバンドの指圧は副反応が出やすかった。

ほかに参考にした論文(10本)

判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。