[1]ロイシン代謝物HMBは若い人の筋トレによる体組成・筋力の変化を高めない
- 発表年
- 2020年
- 研究機関
- カナダ・マクマスター大学
- 掲載誌
- Nutrients
- 研究の種類
- システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
- 対象
- 302人
- 結果の向き
- 差なし
筋トレ中の18〜45歳の302人(研究11件)で、HMBは除脂肪量や筋力の増え方を高めなかった。

運動後の筋肉の傷みの指標は下がります。筋トレ中の筋肉量は増えません。
筋トレをしている若い〜中年の人の話です。高齢者や筋肉が落ちた人では、わずかに増えたとする分析が2本ありますが、どちらもぎりぎりの差で、根拠の確かさは低めです。
筋肉を増やしたいなら、まず筋トレの内容と食事のたんぱく質の量を見直すのが一般的な順番です。運動後の筋肉の傷みを抑えたい人は試す余地がありますが、筋肉痛そのものが減るとは確かめられていません。持病や服薬がある人は、医師か薬剤師に相談してください。
この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。
| 項目 | 点 | 配点 | 何を見るか |
|---|---|---|---|
| 研究デザイン | 40 | 40 | いちばん信頼できる研究の種類 |
| 研究の量 | 13.4 | 20 | 研究件数と参加人数 |
| 一致度 | 20.8 | 25 | 結果の向きがそろっているか |
| 新しさ | 10 | 10 | 最新の研究が何年以内か |
| 精度 | 2 | 5 | 信頼区間が「差なし」をまたがないか |
合計 86.2 点を、エビデンス強度 A の範囲(75〜100 点)に収めて、スコアは 86 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 2 本・RCT のメタ解析 2 本。
配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。
HMBは、必須アミノ酸のロイシンが体内で代謝されてできる物質です。筋肉の分解を抑えるとされ、筋トレをする人向けのサプリとして使われています。カルシウム塩と遊離酸という型があり、研究ではどちらも使われています。注意点は、飲むだけで筋肉が増えるわけではなく、研究も筋トレとの組み合わせで調べられていることです。
答えの中心は、カナダのマクマスター大学などの研究チームが2020年に発表したメタ解析です [1]。メタ解析とは、条件の近い試験の結果を集めて、まとめて分析する方法です。筋トレをしている18〜45歳の302人(研究11件)のデータが集められました。
| 研究の種類 | 筋トレ中の若い成人でHMBを調べた、二重盲検のランダム化比較試験のメタ解析 |
|---|---|
| 対象 | 筋トレをしている18〜45歳(302人・研究11件) |
| 比べたもの | HMBと偽薬 |
| 結果 | 除脂肪量・筋力の増え方に有意な差はなかった(体重はわずかに増えた) |
筋力の増え方にも差はなく、体重だけがわずかに増えました [1]。
除脂肪量とは、体重から脂肪を除いた重さで、筋肉が大半を占めます。アスリート161人(研究5件)を集めた、アメリカのコンコーディア大学シカゴなどの2022年のメタ解析でも、除脂肪量への効果は小さくプラス寄り(0.30)でしたが、統計的に確かな差ではありませんでした [3]。プラス寄りの結果は、たんぱく質の摂取が1日体重1kgあたり1.6g未満のときに限られる傾向でした。
筋トレ経験のある男性53人の8週間の試験でも、HMBをとったグループと偽薬のグループで、筋力などの変化に差はありませんでした [4]。
アメリカのペンシルベニア大学などの研究チームが2020年に発表した試験では、脚の除脂肪量だけHMBを足したグループで多く増えました [5]。全員がホエイプロテインをとったうえでHMBか偽薬を足しましたが、全身の除脂肪量には差が出ませんでした。
脚の除脂肪量はプロテインだけより増えましたが、全身では差がありませんでした。
複数のメタ解析をさらにまとめた傘レビューでは、23〜79歳の11本の分析で除脂肪量が増えました(0.22) [6]。ただし、若い人と高齢者・筋肉が落ちる状態の人の研究が混ざり、上のメタ解析と重なるため、この記事の判定には数えていません。
筋肉量がわずかに増えたとするメタ解析が2本ありますが、どちらもぎりぎりの差で、ほかの分析では差が出ておらず、結果は割れています。根拠の確かさは低めです。結果のばらつきが大きいためです。
前向きな結果が出ているのは、この傷みの指標です。栄養の工夫と運動後の筋肉の傷みを調べたメタ解析53本をまとめた、イランのテヘラン医科大学などの2024年の傘レビューで、HMBは運動後の血液中のCK(筋肉が傷つくと増える酵素)とLDHを下げました。根拠の確実性は中程度です [2]。
健康な人324人(研究10件)のメタ解析では、HMBをとると運動後のCKが平均60.71 U/L低く、効果は6週間以上とった研究ではっきりしていました [12]。
運動習慣のない男性28人の日本の試験では、HMBを2週間か4週間とってから腕に強い負荷の運動をすると、偽薬より筋力と関節の動く範囲の落ち込みが小さく、腕のはれも小さくなりました [13]。1日1.5 gの少なめの量を2週間とった20人の試験でも、筋力と関節の動く範囲の落ち込みは小さくなりましたが、ほかの傷みの指標には差がありませんでした [14]。
傷みの指標が下がることと、回復が早まることは別の話です。傘レビューでは、HMBは筋肉痛そのものを減らす栄養素には挙がっていません [2]。
研究で使われた期間は、2週間の試験から12週間の試験、12か月の試験までさまざまです。副作用については、集中治療室(ICU)に入院した大人266人の試験で、HMBをとった134人のうち3人に高血糖が起きました [16]。健康な人の副作用は、今回集めた研究では確かめていません。持病がある人、服薬中の人、妊娠中の人は、使う前に医師や薬剤師に確認してください。
筋トレ中の若い〜中年の人の結果を、高齢者や病気の人にそのまま当てはめないでください。
HMBは、運動後の筋肉の傷みの指標を下げますが、筋トレ中の筋肉量は増やしません。
高齢者や筋肉が落ちた人では、わずかに増えたとする分析が2本ありますが、どちらもぎりぎりの差です。
筋肉を増やすなら、まず筋トレと食事のたんぱく質を整えましょう。
飲むタイミングを比べた結果は、今回集めた研究では確かめていません。傷みの指標が下がった日本の試験では、運動の前に2週間か4週間とり続けていました [[30589391]]。
全員がホエイプロテインをとったうえでHMBを足した試験では、脚の除脂肪量だけ増え、全身では差がありませんでした [[32164702]]。プロテインのとり方は[プロテインは筋トレの前と後どっちに飲むといい?](/evidence/protein-timing)で扱っています。
大学ラグビー選手16人の試験では、クレアチンにHMBを足しても、クレアチンだけより良くなりませんでした [[32460801]]。クレアチンそのものは[筋トレでクレアチンを摂ると何が良いのか?](/evidence/creatine-training-benefits)をご覧ください。
筋トレ中の18〜45歳の302人(研究11件)で、HMBは除脂肪量や筋力の増え方を高めなかった。
メタ解析53本をまとめ、HMBは運動後のCKとLDHを下げた(根拠の確実性は中程度)。
アスリート161人(研究5件)で、除脂肪量への効果は小さくプラス寄り(0.30)だったが確かな差ではなかった。
筋トレ経験のある男性53人の8週間の試験で、HMBと偽薬のあいだに変化の差はなかった。
筋トレに慣れていない若い男性16人で、HMBを足すと脚の除脂肪量は増えたが全身では差がなかった。
23〜79歳を含む11本の分析で除脂肪量がわずかに増えた(0.22)。若い人と高齢者が混ざり、元の研究と重なる。
高齢者596人(RCT10件)で、筋トレにHMBを足しても手足の筋肉量に有意な差はなかった。
サルコペニアの人で骨格筋量の指標がわずかに高かった(0.32)が、信頼区間の下限がゼロにかかった。
筋肉が落ちやすい人2137人(RCT15件)で、筋肉量の増加は小さく(0.25)、ぎりぎり確かと言えない差だった。
サルコペニアの人の研究6件で、握力は高まったが除脂肪量や骨格筋量に有意な差はなかった。
ビタミンDが足りない60歳以上の117人の12か月の試験で、運動しない人の除脂肪量が6か月時点で増えた。
健康な人324人(研究10件)で、運動後のCKが平均60.71 U/L低かった。
運動習慣のない男性28人で、HMBを2週間か4週間とると、運動後の筋力などの落ち込みが小さかった。
運動習慣のない男性20人で、1日1.5 gを2週間とると筋力などの落ち込みは小さかったが、他の指標に差はなかった。
大学ラグビー選手16人で、クレアチンにHMBを足しても、クレアチンだけより良くならなかった。
ICUの大人266人で、HMBは疲れやすさを少し減らしたが、筋肉量など他の項目には効果がなかった。
判定「効かない」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。