食物繊維で腸内環境(腸内細菌)は良くなる?

食物繊維で腸内環境(腸内細菌)は良くなる?
読了目安 5〜7分最終更新日 2026.11.06
答え効く

良くなります。便の中のビフィズス菌が増えます。

根拠

健康な成人のランダム化比較試験 64 件(2099 人)をまとめた解析で、食物繊維をとった人は、プラセボや食物繊維の少ない食事の人よりビフィズス菌と乳酸菌が多くなりました [1]。イヌリンやオリゴ糖で特にはっきりしていました。一方、ふだんの主食を全粒穀物に置き換える試験は、変化があったのが 2 件だけで、効きません。根拠の確かさは低めです。研究の数が 6 件と少ないためです [2]。腸内細菌の種類の多さは、まとめの解析で差がなく、その後の試験は割れていて、まだ分かりません [1]。

この答えの範囲

健康な成人の、便の中の菌の話です。乳児や病気のある人は同じとは限りません。便秘や免疫への効果は、この記事では扱いません。

じゃあ、どうする?

イヌリンやオリゴ糖のような発酵しやすい食物繊維が、ビフィズス菌を増やす近道です。研究では、乳児から高齢者までを含む解析で、チコリ由来のイヌリンを一日 3〜20g、7 日以上とった試験が中心です [3]。ふだんの食事を全粒穀物に変えるだけでは、菌の変化は小さい結果でした。持病や服薬中の人、お腹の調子が気になる人は、医師や薬剤師に相談してください。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。高い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。11 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。おおむね一致
判定の内訳を見る(スコア 98 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量18.520研究件数と参加人数
一致度2525結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 98.5 点を、エビデンス強度 A の範囲(75〜100 点)に収めて、スコアは 98 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 1 本・RCT のメタ解析 4 本。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

腸内環境とは

腸内環境は、大腸にすむ細菌(腸内細菌)の量や顔ぶれの状態を指す言葉です。食物繊維は、人の消化酵素で消化されにくく、大腸まで届いて腸内細菌のエサになる成分です。野菜・豆・穀物・きのこなどの食品に含まれ、イヌリンやオリゴ糖のように発酵されやすいタイプはサプリにも使われます。この記事では、腸内環境を、ビフィズス菌などの量と、菌の種類の多さに分けて見ます。ここまでは一般的な説明で、研究で確かめたものではありません。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、オーストラリアのボンド大学などの研究チームが2018年に発表したメタ解析です [1]。メタ解析とは、同じテーマの試験の結果を集めて、数字でまとめる方法です。

研究の種類ランダム化比較試験のメタ解析
対象健康な成人(64件・2099人)
比べたもの食物繊維をとる群と、プラセボまたは食物繊維の少ない食事の群
結果食物繊維の群でビフィズス菌と乳酸菌が多かった
まとめて分析した結果食物繊維をとった人は、便の中のビフィズス菌が多くなりました(標準化平均差0.64。値が大きいほど差が大きい)[1]。

フルクタン(イヌリンなど)とガラクトオリゴ糖で、特に差が大きい結果でした。

乳酸菌も増えましたが、増え方はビフィズス菌ほど大きくありません。根拠の確かさは高いと言えます。

どんな食物繊維で、どれくらい?

同じ向きの結果が、種類や年代を変えた複数のまとめ研究でそろっています。

  • チコリ由来のイヌリン: 一日 3〜20g を 7 日以上とった試験 50 件(2525 人)で、ビフィズス菌が増えました(標準化平均差0.83)[3]。ただし、この解析は 0〜83 歳の人を含み、乳児・子ども・病気のある人も入っています。読者と同じ健康な成人だけの結果ではありません。
  • フラクトオリゴ糖: 試験 8 件のまとめで、ビフィズス菌が増えました。一日 5g より多い量、4 週間より長い期間で、増え方が大きくなりました [4]。成人と乳児が両方入っています。
  • 60 歳以上: 試験 29 件のまとめで、プレバイオティクスでビフィズス菌が増えました [5]。
  • 食物繊維が少ない人: イヌリンを含むバーを 4 週間食べた試験で、一日 7g では大きく増え、3g でも検査の方法によっては増えました [6]。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

菌の種類の多さ(多様性)は、同じようには増えません。64 件のメタ解析では、食物繊維の群とほかの群で差がありませんでした [1]。その後の試験は割れています。2020年の試験では、小麦ふすま由来の食物繊維を 12 週間とった人で、ビフィズス菌は増えましたが多様性は下がりました [7]。2021年の試験では、チコリの長鎖イヌリンを 2 か月とった 55〜80 歳で、多様性は高くなりました [8]。

多様性が下がった試験腸の通過がゆっくりめの成人 48 人が、小麦ふすま由来の食物繊維を 12 週間とりました。

ビフィズス菌は増えたので、多様性が下がることをそのまま悪いとは言い切れません。

根拠の確かさは低めです。試験ごとに結果が違い、参加者が数十人の試験が中心のためです。

ふだんの食事を変えるだけだと?

全粒穀物や食物繊維の多いパンに置き換える試験は、6 件のうち、腸内細菌に変化があったのは 2 件でした。デンマークの試験では、全粒穀物の食事を 8 週間続けても、精製穀物と比べて大きな変化はありませんでした [9]。太りぎみの成人 70 人が、全粒のライ麦や小麦に 6 週間置き換えた試験も、菌の構成は変わりませんでした [2]。一方、白いパンを食物繊維の多いパンに 2 週間置き換えた 22 人の試験では、多様性が高くなりました [10]。根拠の確かさは低めです。研究の数が少なく、結果がそろっていないためです。

よく言われていることは本当?

  • 食物繊維は善玉菌(ビフィズス菌・乳酸菌)を増やす本当です。 健康な成人の試験 64 件のまとめで、ビフィズス菌と乳酸菌が増えました [1]。
  • 腸内細菌のバランス(多様性)が良くなる研究が割れていて、まだ分かりません。 まとめの解析では差がなく、その後の試験は増えた・減ったに分かれています [1]。根拠の確かさは低めです。
  • 玄米・全粒粉など、食事から摂れば腸内環境が整う多くの試験で大きな変化は見られていません。 変化があったのは 6 件中 2 件です [2]。根拠の確かさは低めです。
  • 腸内細菌が短鎖脂肪酸を作り、腸に良い一貫して増えるとは言えません。 健康な成人の研究 44 本の系統的レビューで、短鎖脂肪酸ははっきり増えるとは限りませんでした [11]。根拠の確かさは低めです。
  • 便秘・下痢が良くなるこの記事では扱いません。 便通は 便秘対策のサプリと食事は? で確かめています。
  • 腸内環境が整うと免疫力が上がる研究が見つかっていません。 55〜80 歳の長鎖イヌリンの試験では、ワクチンへの免疫の反応は変わりませんでした [8]。
  • ゲル状になって腸の老廃物を落とす人で確かめた研究は見つかっていません。

02注意点

研究の多くは健康な成人を対象にしています。たとえば小麦ふすま由来の食物繊維の試験では、成人 48 人が一日 15g を 12 週間とりました [7]。量や種類は研究ごとに違い、多様性の変化は一定ではありません。乳児・子ども・病気のある人の結果は、同じとは限りません。フラクトオリゴ糖のまとめでは、お腹の張りやおならは対照群と差がありませんでした [4]。持病や服薬中の人、お腹の調子が気になる人は、医師や薬剤師に確認してください。

ビフィズス菌が増えることと、体の不調が良くなることは別

この記事の結果は便の中の菌の量で、便秘や免疫などの体の変化を示したものではありません。

03まとめ

食物繊維は、便の中のビフィズス菌と乳酸菌を増やします。
菌の種類の多さと、ふだんの食事を変えるだけの効果は、まだはっきりしません。
ビフィズス菌を増やしたいなら、イヌリンやオリゴ糖など発酵しやすい食物繊維を、続けやすい形で試すのが研究に近い方法です。

04よくある質問

Qどのくらいで菌は増えますか?

研究では 7 日以上とった試験がまとめられています [[35833477]]。3g と 7g のイヌリンを 4 週間とった試験でも増えました [[32320024]]。何日で何倍になるかは、研究から言えません。

Qふだんの食物繊維が少ない人のほうが効きますか?

食物繊維が少ない人でも多い人でも、イヌリン型フルクタンを一日 16g、3 週間とってビフィズス菌が増えた試験があります [[29307330]]。どちらの人でも増える結果でした。ただし、ふだんの食物繊維が多い人のほうが腸内細菌の反応は大きかったと報告されています。少ない人のほうが効く、とは言えません。

Q多様性が下がったら悪いことですか?

研究では、そう言い切れません。多様性が下がった試験でも、ビフィズス菌は増えていました [[31983281]]。多様性の変化が体にどう影響するかは、ここでは確かめられていません。

Q腸内環境が良くなると、お通じや免疫も良くなりますか?

便秘は別の記事で扱っています。免疫は、健康な人で食物繊維が免疫を上げるという試験が見つかっていません。

05参照した論文

判定に使った主な論文(11本)

[1]健康な成人の食物繊維と腸内細菌の構成:メタ解析

発表年
2018年
研究機関
オーストラリア・ボンド大学
掲載誌
The American journal of clinical nutrition
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
2,099人
結果の向き
良い方向

64件・2099人のメタ解析で、食物繊維でビフィズス菌が増えた。多様性は差がなかった。

[2]全粒ライ麦・小麦と腸内細菌:6週間の試験

発表年
2017年
研究機関
Vuholm Sほかの研究チーム
掲載誌
The Journal of nutrition
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
70人
結果の向き
差なし

成人70人が6週間置き換えても、腸内細菌の構成は変わらなかった。

[3]チコリ由来イヌリンとビフィズス菌・便通:メタ解析

発表年
2023年
研究機関
ハンガリー・ペーチ大学
掲載誌
Critical reviews in food science and nutrition
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
2,525人
結果の向き
良い方向

50件・2525人のメタ解析で、チコリのイヌリンでビフィズス菌が増えた。

[4]フラクトオリゴ糖と腸内細菌:メタ解析

発表年
2022年
研究機関
中国・北京大学
掲載誌
Nutrients
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究8件を統合
結果の向き
良い方向

試験8件のメタ解析で、フラクトオリゴ糖でビフィズス菌が増えた。

[5]高齢者のプロバイオティクス等と腸内細菌:メタ解析

発表年
2025年
研究機関
中国・広州中医薬大学
掲載誌
Nutrition journal
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
1,633人
結果の向き
良い方向

60歳以上の29件のメタ解析で、プレバイオティクスでビフィズス菌が増えた。

[6]チコリのイヌリンを含むバーと腸内細菌

発表年
2020年
研究機関
カナダ・カルガリー大学
掲載誌
The American journal of clinical nutrition
研究の種類
ランダム化比較試験(クロスオーバー)参加者が順番を変えながら複数の条件を体験し、結果を比べる試験。
対象
50人
結果の向き
良い方向

食物繊維の少ない成人50人が4週間食べ、ビフィズス菌が増えた。

[7]小麦ふすま由来プレバイオティクスの腸内細菌への効果

発表年
2020年
研究機関
オランダ・マーストリヒト大学医療センター
掲載誌
Gut microbes
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
48人
結果の向き
良い方向

成人48人が12週間とり、ビフィズス菌は増え、多様性は下がった。

[8]高齢者の腸内細菌と長鎖イヌリン

発表年
2021年
研究機関
オランダ・フローニンゲン大学
掲載誌
Molecular nutrition & food research
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
良い方向

55〜80歳が2か月とり、ビフィズス菌が増え、多様性も高かった。

[9]全粒穀物の食事と腸内細菌のクロスオーバー試験

発表年
2019年
研究機関
デンマーク・デンマーク工科大学
掲載誌
Gut
研究の種類
ランダム化比較試験(クロスオーバー)参加者が順番を変えながら複数の条件を体験し、結果を比べる試験。
対象
60人
結果の向き
差なし

成人60人が8週間ずつ食べ、腸内細菌に大きな変化はなかった。

[10]食物繊維の多いパンへの置き換えと多様性

発表年
2024年
研究機関
オーストラリア・CSIRO
掲載誌
Nutrients
研究の種類
ランダム化比較試験(クロスオーバー)参加者が順番を変えながら複数の条件を体験し、結果を比べる試験。
対象
22人
結果の向き
良い方向

成人22人が2週間置き換え、多様性が高くなった。

[11]健康な成人の食物繊維と短鎖脂肪酸:系統的レビュー

発表年
2022年
研究機関
イタリア・ミラノ大学
掲載誌
Nutrients
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
—
結果の向き
結果が割れている

研究44本で、短鎖脂肪酸ははっきり増えるとは限らなかった。

ほかに参考にした論文(10本)

判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。