鍼灸で妊娠しやすくなる?

鍼灸で妊娠しやすくなる?
読了目安 5〜7分最終更新日 2026.11.06
答え効く

体外受精中の人には効きます。出産に至る率が1.11倍になります。ただし偽の鍼と比べると差はありません。

根拠

体外受精中に鍼をした女性の比較試験58件・10,968人のまとめでは、鍼をした人は、鍼なしなどの人より出産に至る率が1.11倍でした(23の比較) [1]。一方、偽の鍼と比べた試験だけを集めると、出産に至る率に差はなく、確実性は高いと評価されています [2]。根拠の確かさは低めです。偽の鍼と比べるか鍼なしと比べるかで、結果が分かれるためです。

この答えの範囲

体外受精・顕微授精を受けている女性の話です。

じゃあ、どうする?

体外受精中に試したい場合は、効果は小さいと知ったうえで、主治医に伝えて決めましょう。早い時期の流産が増えたというまとめもあるので、時期や回数は医師と相談を [3]。自然妊娠が目的なら、鍼灸に頼らず、まず産婦人科で原因を調べるのが近道です。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。低い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。16 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。一部で結果が異なる
判定の内訳を見る(スコア 64 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量2020研究件数と参加人数
一致度16.125結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 91.1 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 1 本・RCT のメタ解析 4 本・観察研究 1 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「低い」で、これを強度の上限にしています。 この上限により、強度を B から C に下げました。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

鍼灸とは

鍼灸は、体のツボに細い鍼を刺したり、もぐさを燃やして温めたりする、東洋医学の施術です。妊活では、血の巡りや体調を整えるとされ、体外受精と並行して受ける人もいます。この記事では、鍼と電気を流す鍼を調べた研究を中心に見ます。ここに書いた鍼灸の説明は一般によく紹介されているもので、研究で確かめたものではありません。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

体外受精中の鍼の研究

答えの中心は、中国の北京青年政治学院などの研究チームが2023年に発表した系統的レビューです [1]。系統的レビューとは、決めた手順で関連する研究を集め、結果を整理する方法です。体外受精中の女性に鍼をした比較試験58件が集められました。

研究の種類体外受精中に鍼をした比較試験の系統的レビュー
対象体外受精を受けた女性(58件・10,968人。出産に至る率は23の比較)
比べたもの鍼をした群と、鍼なしなどの対照群
結果鍼をした人は出産に至る率が1.11倍(確実性は低い)
系統的レビューの結果鍼をした人は、鍼なしなどの人より、出産に至る率が1.11倍でした(58件のうち23の比較の合算)。

臨床妊娠率は1.19倍でしたが、こちらは確実性が非常に低いと評価されています [1]。

1.11倍は小さな差です。ほかのまとめも、鍼なしなどとの比較では同じ向きの結果を報告しています [3] [4]。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

皮膚に刺さらない偽の鍼を使った群と比べると、結果が変わります。偽の鍼と比べた試験だけを集めたまとめでは、出産に至る率に差はなく、確実性は高いと評価されました [2]。オーストラリアとニュージーランドの848人の試験でも、出産に至った人は鍼で18.3%、偽の鍼で17.8%でした [5]。

偽の鍼と比べると差が消えます。鍼なしとの比較で出た差は、鍼そのものの効果とは言い切れません。胚移植の前後の処置188件を比べた大きなまとめでも、鍼は妊娠率をはっきり高めませんでした [6]。

偽の鍼と比べた試験体外受精を受けた女性848人(オーストラリアとニュージーランド)

出産に至る率は鍼で18.3%、偽の鍼で17.8%と差がありませんでした。

何を検証した研究か

  • 体外受精中の出産に至る率・妊娠率: 鍼なしとの比較では上回り、偽の鍼との比較では差なし
  • 卵巣の反応が悪い女性140人の試験: 出産に至る率は鍼で21.43%、鍼なしで15.71%と、はっきりした差なし [7]
  • 排卵障害の女性: 下の節
  • 不安: 下の節

よく言われていることは本当?

  • 体外受精の成功率を上げる小さく効きます。 出産に至る率は1.11倍ですが、偽の鍼と比べると差はありません [1] [2]。
  • 自然妊娠しやすくなる・排卵が整う効きません。 多嚢胞性卵巣症候群の女性で、本物の鍼と偽の鍼の出産に至る率に差はありませんでした(926人) [8]。排卵誘発剤に鍼を足した比較のまとめでも、妊娠率に差はありませんでした [9]。
  • 不妊治療の不安をやわらげる小さく効きます。 体外受精中の女性1785人(試験8件)で、採卵・胚移植のあとの不安がわずかに小さくなりました。根拠の確かさは低めです。研究の確実性が非常に低いと評価されているためです [10] [11]。
  • 子宮の血流をよくし、内膜を厚くする根拠は弱いです。 鍼と子宮内膜のレビュー10本は、すべて方法の質が非常に低いと評価されました [12]。体外受精の女性70人の試験では、内膜の厚さに差はなく、血流の一部の指標は鍼群で高かったものの、妊娠率・出産率には差がありませんでした [13]。
  • 冷えや自律神経を整える研究が見つかりません。 妊活中の女性で冷えや自律神経を測った質の高い研究は見つかっていません。
  • 採卵のときの痛みをやわらげる研究が足りません。 42件のレビューの要旨に、痛みの軽さと関係していたという記載があるだけで、数値はありません [3]。

排卵障害の人では、結果が割れています

排卵が起こりにくい女性では、研究の結果が割れています。134人の試験では、排卵誘発剤に本物の鍼を足した群の治療周期あたりの妊娠率が56.72%、偽の鍼の群が29.85%でした [14]。一方、926人の大きな試験を含むまとめでは、本物と偽の鍼に差はありませんでした [8]。鍼だけと排卵誘発剤だけを比べた試験では鍼のほうが妊娠率が高く [9]、鍼を含む治療で妊娠率が1.84倍になったというまとめもありますが、含まれた試験は質に不明な点が多いものでした [15]。質は低めです。

02注意点

体外受精を受けた女性の試験42件のまとめ(計7400人)では、鍼のグループで早い時期の流産が1.51倍に増えていました [3]。一方、偽の鍼と比べた試験のまとめでは、流産に差は出ていません(確実性は高い) [2]。27件のまとめでも流産に有意な差はなく [16]、流産への影響ははっきりしていません。

副作用の中身は、軽〜中等度の局所の反応が中心です [3]。不妊の女性27件のまとめでは、副作用が1.65倍多く、差は小さいとは言えません [16]。多嚢胞性卵巣症候群のまとめでも、本物の鍼は偽の鍼より副作用がやや多い結果でした [8]。体外受精の治療中の人、持病や服薬のある人は、主治医に相談してから受けてください。

治療中の鍼灸は、主治医に伝えてから

体外受精の時期と鍼の時期が重なるので、受ける日程は医師と相談してください。

03まとめ

体外受精中の鍼灸は、鍼なしと比べて出産に至る率が1.11倍で、小さく効きます。
偽の鍼と比べると差がないので、鍼灸だけで成功率が大きく変わるとは言えません。
受けるなら主治医に伝え、費用と時間に見合うかを自分で決めましょう。

04よくある質問

Q自然妊娠でも、鍼灸で妊娠しやすくなりますか?

研究では確かめられていません。排卵が起こりにくい女性でも、本物と偽の鍼で出産に至る率に差はありませんでした [[31264709]]。

Q体外受精と鍼灸は、いつ併用すればよいですか?

研究では、胚移植の前後に受ける形が多く調べられています。ただし胚移植の前後の鍼は妊娠率をはっきり高めませんでした [[35325124]]。時期は主治医と相談してください。

Q鍼灸が不安をやわらげるなら、受ける意味はありますか?

不安は小さく下がりましたが、確実性は非常に低いと評価されています [[35570176]]。リラックスのために受けるのは選択肢の一つです。

Qお灸だけでも効果はありますか?

この記事で見た研究は、鍼と電気を流す鍼が中心です。お灸だけの結果は確かめていません。

05参照した論文

判定に使った主な論文(16本)

[1]体外受精に併用する鍼の妊娠への効果のまとめ

発表年
2023年
研究機関
中国・北京青年政治学院
掲載誌
Chinese journal of integrative medicine
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
10,968人
結果の向き
良い方向

体外受精を受けた女性10,968人の試験58件で、鍼をした人は出産に至る率が1.11倍だった。

[2]体外受精での本物の鍼と偽の鍼の比較

発表年
2021年
研究機関
オーストラリア・RMIT大学
掲載誌
Acupuncture in medicine : journal of the British Medical Acupuncture Society
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
1,835人
結果の向き
差なし

偽の鍼と比べた試験だけを集めると、出産に至る率に差はなかった。確実性は高い。

[3]体外受精を受ける女性への鍼の更新版系統的レビュー

発表年
2025年
研究機関
中国・成都中医薬大学
掲載誌
International journal of nursing studies
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
7,400人
結果の向き
良い方向

42件の試験(計7400人)で、鍼をした人は臨床妊娠率が1.19倍。早い時期の流産も1.51倍だった。

[4]生殖補助医療に鍼と漢方を組み込む東アジア伝統医学のレビュー

発表年
2025年
研究機関
日本・早稲田大学
掲載誌
Healthcare (Basel, Switzerland)
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
10,776人
結果の向き
良い方向

10,776人の37件の試験で、鍼をした人は出産に至る率が1.287倍だった。

[5]体外受精の出産に対する本物の鍼と偽の鍼の比較試験

発表年
2018年
研究機関
オーストラリア・ウェスタンシドニー大学
掲載誌
JAMA
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
848人
結果の向き
差なし

848人の試験で、出産に至った人は鍼で18.3%、偽の鍼で17.8%と差がなかった。

[6]胚移植を最適にする処置の包括的な系統的レビュー

発表年
2022年
研究機関
イギリス・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン
掲載誌
Human reproduction update
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
差なし

胚移植の前後の処置を比べた大規模なまとめで、鍼は臨床妊娠率をはっきり高めなかった。

[7]卵巣の反応が悪い女性への鍼の多施設ランダム化試験

発表年
2026年
研究機関
中国・中国中医科学院
掲載誌
Frontiers in endocrinology
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
140人
結果の向き
差なし

140人の試験で、出産に至る率は21.43%と15.71%で、はっきりした差はなかった。

[8]多嚢胞性卵巣症候群への鍼のコクラン・レビュー

発表年
2019年
研究機関
オーストラリア・シドニー工科大学
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
926人
結果の向き
差なし

本物の鍼と偽の鍼で、出産に至る率に差はなかった。926人の結果で、確実性は低い。

[9]排卵障害の不妊に対する鍼とクロミフェンの系統的レビュー

発表年
2020年
研究機関
中国・成都中医薬大学
掲載誌
Acupuncture in medicine : journal of the British Medical Acupuncture Society
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
1,441人
結果の向き
差なし

排卵誘発剤に鍼を足しても、妊娠率に差はなかった。鍼だけの比較では鍼のほうが高かった。

[10]鍼が体外受精に伴う不安に与える効果のまとめ

発表年
2022年
研究機関
アメリカ・カリフォルニア大学サンフランシスコ校
掲載誌
Reproductive biomedicine online
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
1,785人
結果の向き
良い方向

1785人の8件の試験で、鍼をした人は不安がわずかに小さかった。確実性は非常に低い。

[11]不妊の女性の感情の問題に対する鍼治療のまとめ

発表年
2023年
研究機関
韓国・釜山大学校
掲載誌
Healthcare (Basel, Switzerland)
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
1,930人
結果の向き
良い方向

不妊の女性1930人の12件の試験で、鍼をした人は不安と抑うつの点数が改善していた。

[12]不妊の女性の子宮内膜の受け入れやすさへの鍼のレビューの総括

発表年
2025年
研究機関
中国・成都中医薬大学附属病院
掲載誌
Frontiers in medicine
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究10件を統合
結果の向き
結果が割れている

鍼と子宮内膜の10本のレビューは、すべて方法の質が非常に低いと評価された。

[13]体外受精の胚移植を受ける女性の子宮内膜血流への鍼の効果

発表年
2024年
研究機関
中国・華中科技大学同済病院
掲載誌
Chinese journal of integrative medicine
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
70人
結果の向き
差なし

70人の試験で、内膜の厚さや妊娠率・出産率に差はなかった。

[14]多嚢胞性卵巣症候群への鍼の排卵率・妊娠率への効果

発表年
2025年
研究機関
中国・中国中医科学院西苑病院
掲載誌
Complementary therapies in medicine
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
134人
結果の向き
良い方向

134人の試験で、鍼を足した群の治療周期あたりの妊娠率は56.72%、偽の鍼の群は29.85%だった。

[15]生殖補助医療をしない不妊女性への鍼の系統的レビュー

発表年
2019年
研究機関
中国・広州中医薬大学
掲載誌
Medicine
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

鍼を含む治療の群は妊娠率が1.84倍だったが、含まれた試験は質に不明な点が多い。

[16]女性の不妊に対する鍼治療のランダム化試験のまとめ

発表年
2022年
研究機関
中国・広州中医薬大学東莞病院
掲載誌
Evidence-based complementary and alternative medicine : eCAM
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
7,676人
結果の向き
良い方向

27件の試験で、鍼をした人は出産率が1.34倍で、副作用も1.65倍多かった。

ほかに参考にした論文(12本)

判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。